第255話 再会のナッツ?
文字数 1,488文字
ノーム村をめざすあいだは平原をよぎっていく。
ぽよぽよ街道だ。
前もそうだったけど、出てくるのは、ぽよぽよのみ。白ぽよぽよ。黒ぽよぽよ。茶ぽよぽよ。白黒ブチぽよぽよに、茶白ぽよぽよ。なかにはめずらしい水色やピンクの子もいる。
ただ、みんな、ぽよちゃんを見たら、じっと丸くなるんで、戦闘にはならないんだよね。
「みんな、ぽよちゃんのことをおぼえてるんだ! ぽよぽよ王の帰還だね」
「ピュイ〜」
じっさい、ぽよちゃんは、ぽよぽよ王の職業もマスターした。
じつはこの、ぽよぽよ王がスゴイ職だった。
なんと! 僕の風神のブーツについてる装備品魔法のスピードファイターを職業魔法としておぼえることができるのだ。魔法だから、自分にも、仲間にもかけることができる。
みんなの数値が爆あがりしてる今なら、素早さ百倍までアップできるこの魔法の効果は恐ろしく高い。
戦闘で敵のターンまでまわること、もうほぼないんじゃないかな? ボス戦でもへたすると、1ターンで勝てるかも。
「可愛いなぁ。ぽよぽよたちが、ぽよちゃんにかしずいてる」
「キュイ〜」
もちろん、僕らはもうブタさんじゃないよ? ちゃんと転職した。いつまでもブタっ鼻じゃいられない。
平穏にぽよぽよ草畑を進んでいくと、やがて日の暮れるころ、森が見えてきた。あの森のなかにノームたちの村があるんだ。
ナッツ、元気かなぁ?
前のときから、三ヶ月はたった? ノーム村だと職業はマスターできなかっただろうけど、ちょっとはナイフの使いかた上達してるといいけど。
何より、早くお母さんを治してあげたいよね。これで、やっとナッツたちも人間の世界に戻れるんだ。
森の手前で、ワレスさんたちは停車した。
「かーくん。いきなり、おれたちが入っていくと、侵入者だと勘違いさせてしまうかもしれない。まず、おまえたちの隊が行って、説明をしてくれ。承諾を得たら戻ってきてほしい」
「わかりました。じゃあ、あのときのメンバーがいいかな。僕とアンドーくんと、ぽよちゃんと、たまりんか。クピピコもいっしょだった」
「待って。おれも行ってみたい!」と言いだしたのは、アジだ。学者になりたいみたいだから、ノーム村に興味があるんだろう。
アジは子どもだから、ノームたちを警戒させることはないかな?
「うん。じゃあ、行こうか」
「わあっ、かーくん。ノーム村、久々だねぇ。ナッツ、どげしちょうかな?」
「三ヶ月じゃ、そんなに変わってないよね。身長が一センチは伸びたかも?」
なんて言ってたんだけど。
村の入口でプチっとクピピコにコビット王の剣でついてもらった。あっというまに僕らはちぢむ。ちぢむ〜
「はあっ! 毎回だけど、注射ていどには痛いよね!」
「そげだー」
「イテテー! チクンときたよー!」
「キュイ?」
いいよね。ぽよちゃんは刺されないから……。
いよいよ、ノームの村へ入っていく。ノームの村長さんの家にナッツは居候してるんだ。もう夕ご飯の時間帯かな? なんか妙に村のなかがガランとしてる。
「変だなぁ? 前はもっと活気があったよね? 村人があちこち歩いてた」
「うーん。そげだねぇ。さみしげになったねぇ」
村の中心部にやってきた。
広場があって、そのまわりをカラフルな屋根の小さな家々がかこんでる。色とりどりのキノコが庭木みたいだ。
「おーい、村長さーん。ナッツー。来たよー。こんちはー」
僕らの声を聞いて、村長さんの赤い屋根の家から、誰かがとびだしてきた。
誰だ? ナッツ? いや、違うぞ。美少女だ!
「わあ、わあっ! 兄ちゃん! 会いたかったよー!」
ギャー! 美少女に抱きつかれたー! ふへへ……。