第145話 竜毒の壁

文字数 1,589文字



 竜毒って、たぶん、トーマス、前にそれにやられたから個性になったんだろうな。でも、今やるほどのことかな?

 巨人僧侶はハンマーをふるう。三メートルの身長をいかした高い位置からの渾身(こんしん)の一撃。
 まともに食らえば、当然、頭蓋骨がくだける。
 トーマスはミスリルの盾で、それをふせいだ。直撃はさけた。とは言え、トーマスは立ってるのがやっとのようだ。

 あれ? なんだろう。
 巨人僧侶の顔色が悪い。

「毒だな」と猛が言った。
「毒?」
「竜毒だ。猛毒だよ」
「さっき、トーマスが竜毒って言ってたよね。でも、あれって相手から毒攻撃受けないと効果ないんじゃないの?」
「よく見てみろよ。かーくん。竜毒ランク3は仲間が攻撃を受けると、相手を毒状態にするんだ。つまり、自分が攻撃を受けても効果がある」
「あっ、ほんとだ」

 よく読んでなかった。てへっ。

 猛毒だから、行動したり、ターン経過でもHPが減る。減少率がただの毒より高い。

「猛毒は一回で最大HPの20%減る。トーマスの攻撃力なら、通常攻撃より与えるダメージがデカイよ」

 たしかにそうだ。
 巨人僧侶のHPが1000だとしても、一回で200のダメージ。しかもターン経過でも減少するから、毒にかかったときとあわせて、この1ターンで400ダメージだ。

 巨人族は僧侶だから、次の自分の番に毒をなおすだろう。でも、それでターン終了する。HPまではなおせない。そして、その次のターンで攻撃に転じたとしても、また竜毒にかかる。このくりかえしだ。

「そっか。トーマスは竜毒の効果が切れないように気をつけてさえいれば、相手が勝手に自滅してくれるね。素早さ数値もクマりんと同じくらいだから、2ターンに一回は二度動けるだろうし、そのときHP回復もできる」

 自分の番が来たトーマスは『元気いっぱい』を使った。単体のHPを最大までなおしてくれる回復魔法。僕に呪文の唱えかた教えてくれただけあって、満面の笑みだ。

 さらに、身を守る。二回行動できるけど、ムダに攻撃はせず、毒の効果で相手が自滅するのを待つ作戦のようだ。

 僕はトーマスの勝利を確信した。
 ところがだ。
 次のターン、巨人僧侶は毒消しをしなかった。それどころかHP回復もなしだ。

 一回、二回、三回攻撃!
 これは、あばれるとか、猫パンチみたいな連打系の技だ。

 身を守るを使ってるから、トーマスの受けるダメージは半減する。だけど、三連打だ。2000攻撃力の相手が三連打。
 トーマスは失神した。

「ヴィクトリアパーティー中堅、勝利!」

 ああ、トーマスも負けちゃったかぁ。

「惜しかったなぁ。悪くない戦法だったよ。トーマス」
「だな。猛毒は行動のたびにHPが減る。三連打なら600減少したはずだ。つまり、あの巨人僧侶、最大HPが1001とか1002とかだ。減少する20%に加算されないていどに、ほんの少しだけ千をこえてる。三連続攻撃をしても、瀕死で立ってられると計算したわけだ」

 猛毒はHP0になるまで減少するからね。ターン内に相手を倒せなければ自分が戦闘不能になる。
 勝利への気迫ってところか。そんなギリギリの戦いを挑んだんだ。

「蘭さんたち二敗だ。あとがない」
「次は誰が出るのかな?」

 僕はあることを思いだしてガックリした。
 そうだった。試合前にメンバーをモリーからケロちゃんに交代してたっけ。モリーなら蘭さんに変身して、確実に勝てただろうに。

 蘭さん、どうするのかな?
 大将と副将、かわるのかな?
 いや、そのまま、ケロちゃんで行くようだ。

「では、副将戦、始めッ!」

 勝負は一瞬だった。
 開始直後に、ケロちゃんのターン始めに自動発動する技が炸裂(さくれつ)する。

「ケロー!」

 石化舌だ。
 ケロちゃんの長い舌がビロンと伸びて、巨人魔法使いの顔をなめた。
 巨人魔法使いは石になった。

「副将戦、トーマスパーティーの勝利!」

 二勝二敗だ。
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