第70話 子どもたちは、どこへ?

文字数 1,399文字



 貴族区の子どもたちがさらわれた?
 ギガゴーレムはとりもどしたし、もう解決したんじゃなかったのか?

 ぼんやりする僕を、ワレスさんが布団からひっぱぐ。
 ああっ、布団の下にぽよちゃんとくぽちゃんがいるの見つかったー! 必然的にバランもいっしょ。
 だいたい毎晩、このメンバーで寝てる。ミニコは立ったまま寝るんだよなぁ。シルバンといっしょに、みんなのリビングルームでつっ立ってる。

「真夜中にミニゴーレムたちが、ふたたび不穏な動きを見せたらしい。報告によると、各家庭の子どもをかついで北の方角へ走っていったという」
「北ですか?」
「スラム街のある方向だ」

 思いっきり、怪しい。
 絶対、関係ある。

「じゃあ、スラム街に行けば……?」
「おそらくな。今すぐ向かってくれないか?」
「ワレスさんは?」
「いっしょに行ってやりたいが、ゴドバの逃亡さきがしぼりこめそうなんだ。そっちの調査に行かなければ」
「わかりました。僕たちで必ず子どもたちを助けます!」

 さあ、大変なことになったぞ。
 僕は急いで着替えて、リビングへとびだした。蘭さんやアンドーくんはみんな起きてた。僕が最後か。どおりで、ワレスさんがお直々に叩き起こしに来るわけだ。

「朝ごはん、どうしよう」
「しょうがないんじゃないですか? 子どもたちに、もしものことがあったらいけませんから。ガマンして行きましょう」
「そうだね」

 僕って朝ごはんぬくと頭が働かないタイプなんだよなぁ。
 とは言え、ワレスさんにも頼まれたし、チョピンと顔だけ洗って、外へとびだした。
 エレキテルまでは魔法で行けるんだけど、スラム街へはまた徒歩だ。目的地は探さないと見つからない。

 それにしても、僕の地図って、まんなかに穴あいてるんだよな。前に三村くんから買ったやつ。地図は持ちぬしの心を表してるんだって、三村くんは言ってたけど。

「えーと、街の匂いでさ。北東に人の集団がある。あれがスラム街だと思う」

 商人のスキルを使って、行くさきの見当をつけてたときだ。エレキテルの街門からホムラ先生がかけだしてきた。

「おっ、いたいた。待ちなさい。私も行こう」
「先生もですか? 戦えないですよね?」
「ミニゴーレムが子どもをさらったと聞いたからね」

 まあ、しょうがない。お荷物だけど、つれてくか。昨日もなんの役にも立たなかったけどさ。

「そんなことより、先生。僕のスマホの充電器は——」
「何を言ってるんだね。ギガゴーレムの調整でそれどころじゃないよ」
「そうですよね……」

 一晩寝たから、蘭さんの体力はまた5に戻った。レベルアップしても、ぜんぜん強くならない。まあ、そのぶん昨日は買い物で防御力あげたんだけど。

 さて、スラム街への道すじでは、やたらと盗賊が出る。あるいは山賊、海賊。ヤツら戦わずに盗んで逃げようとするから、おちおち遊んでられないんだよね。

 それに、ワールドマップなのに竜兵士が出てくる。これはやはり、これから向かう場所が、魔王軍に支配されてるって暗示だろうか?

 小銭(一回八十億円)をひろいながらめざしていくと、さほど遠くない位置に、その街はあった。
 街というか、外から見ただけでも、ほったて小屋やボロ布のテントや、ダンボールでかこっただけの家とも言えない寝ぐらの集落だ。見るからに貧しい。

 でも、その前に立ったとき、蘭さんが言うんだよね。

「感じます。このなかはダンジョンです」

 ああ、やっぱりねぇ……。
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