第41話 ギガゴーレムはどこに?
文字数 1,541文字
研究所じたいは盗賊団がいなくなったせいか、ダンジョン化の魔法が解けていた。あちこちから白衣を着た研究員たちが現れる。
「ホムラ博士! おケガは?」
「私は無事だ。だが、ギガゴーレムが奪われてしまった」
「なんてことだ。あれを悪用されたら、世界が滅びますよ?」
「うーむ。困ったもんだ。どうしたことか」
世界が滅ぶなんて、物騒なことを言いあってる。
でも、ほんとにそうだ。ミニゴーレムの戦闘力だって、あのサイズのわりに、なかなかのものだ。レベルさえあげれば実戦で活用できる。
でも、ギガゴーレムは単純に体の大きさで言っても、ミニゴーレムの百倍だ。能力も百倍なら、そうとうの強さになる。
一大事だ。
僕らだけでは解決できない。
「ロラン。これはもう、ワレスさんに相談するしかないよ。いったん、シルバースターに帰ろう」
「そうですね」
そんなわけで、ホムラ先生とはここでお別れだ。
「先生。僕たち、王都に帰ります。対処法を考えてから、また来ますので」
「うむ。よろしく頼む。我々は万一、ギガゴーレムが街で暴れた場合、遠隔操作で強制停止できないか考察してみる」
「はい。お願いします。あっ、それと、僕のスマホの充電もできるようにしてくださいね!」
「はっはっはっはっはっ」
そこでなんで笑うかなぁ?
大切なことなんだけど。
とにかく、一刻を争うので、僕らは裏口から外へ出る。魔法で王都へ飛んだ。
ボイクド国の王都。
今朝、汽車で出発した街だ。
シルバースターはひじょうに大きな都市なので、僕もまだ全部、歩きまわったわけじゃない。転移魔法での拠点も、街の出入口、ギルド、王城とある。今回は王城だ。
すでにギガゴーレムが暴れまわってたらどうしようと思ったけど、お城は今のところ平穏だ。
僕らはワレスさんがいる東の内塔へ走っていく。さすがに馬車はムリなんで、僕と蘭さんだけだ。アンドーくんにはモンスターたちのお守りに残ってもらった。
「ワレスさん!」
バンッと扉を乱暴にあけてとびこむ。
いくら忙しくても、もう夕方だから、ワレスさんも部屋に帰ってるだろう——という願いは叶った。ワレスさんはそこにいた。副官のクルウがいるのも、まあわかる。
でも、なんだろう?
あのおさげ髪にメガネの女の子は?
「キャー! また美形キターーーー! ビューティーです! ベリービューティフルッ! あっ、こっちの子も可愛い」
僕と……っていうより、僕はオマケの『可愛い』で、興奮してる前半の九割は蘭さんのことだ。
ワレスさんがため息をついて、僕らをかえりみる。が、その目が蘭さんの上にとまると、大きく見ひらかれた。ヨーロピアンな装飾の椅子から立ちあがり、まじまじと蘭さんを見つめる。
「……ロランに何があった?」
あっ、やっぱり、わかるんだ。さすがはミラーアイズ。蘭さんの今のステータスが見えてるんだな。
「それには深い理由があるんですが、あとで説明するとして」
「五万だぞ? 五万。ただレベルアップしたからって、そうはならない」
「まあ、それには深いわけが……」
たじたじする僕を、蘭さんが手で押しやる。
「大変です! 王立研究所が襲われて、ギガゴーレムが盗まれた!」
「ギガゴーレムが? あれは国防の要になると言うから、資金を提供してやっているんだ。それを盗まれた?」
「相手は盗賊団だけど、もっと強い敵がまじってた。あいつはもしかしたら魔物じゃないかと思う」
ワレスさんは考えこんだ。ムダにさわぎはしないんだな。
「盗賊団の行方に心あたりはあるか?」
そう言われて、僕は思いだした。
「そう言えば、情報屋のリベッカさんが、盗賊団は街の西の洞くつにアジトをかまえてるみたいだって言ってました」
そうか。そこか。次は盗賊団のアジトに行かないといけないのか。