第81話 グレートマッドドクター戦2

文字数 1,497文字



 もう……二人とも、こんなときにかぎってニート気分満喫しないでほしい。
 と言っても、これは職業特性だから本人たちのせいじゃない。幸運数値の高さで確率的に起こる作用だ。困ったなぁ。

「わかった。ロランとアンドーくんは働く気分になったら働いて」
「は〜い」
「うん、まあ、そげだね」

 のんびりしてる彼らが羨ましいような、憎らしいような……いやいや、ダメダメ。二人のせいじゃないんだから。ここはガマンだ。

「じゃあ、バランとシルバンはロランを守って。僕が攻撃する」

 うーん。初回の攻撃要員は僕だけか。こんなことなら、シルバンじゃなく、クマりんを外に出しとくんだったなぁ。それか、モリーを外に出して、僕に変身させとくとか。

 しょうがない。
 僕は孤軍奮闘(こぐんふんとう)だ。うんと足ぶみして、素早さをこのターンのうちにマックスにしておく。

 ターン制だから、ブタさんたちもおとなしく待ってるけど、いいかげん待ちわびてはいるらしい。

「ブヒヒ……ブヒ」
「クエ……」

 待ってる姿は、ちょっと可愛い。あれがミニブタだったらイジメないんだけど。
 実態は猛毒作って街のみんなを苦しめてる極悪非道なモンスターだからな。遠慮なんかしないぞ。

「はい。お待たせ。じゃあ、行きま〜す」

 体かるいなぁ。これなら、たぶん、三、四十回は動けるな。ガーゴイルが素早いせいか、通常のモンスターのときより行動回数が半分も少ないけど。

 まずはやっぱり、お供を始末しとかないと。両側を倒して、最後に傭兵呼びだ。あっ、その前に所持金を預かりボックスに入れとかないとな。

 所持金は千六百億円あまり。今回のダンジョンはそんなに長くなかったから、ひろった金額は少なめだ。
 前に蘭さんから借りたままのボックスに、端数を残してザラザラ入れる。これで残り二十億ちょっとになったから、傭兵呼びで二千万ダメージだね。

 僕は精霊王の剣(レプリカ)をぬいた。

「えい!」

 あれ? スイっとガーゴイルが浮かんでよけた。
 ま、そんなこともあるか。
 通常攻撃なんで必中じゃない。

 ミニコがかけてきて、ポコンとチョップしようとするんだけど、これもかわされる。
 なんだろうか?
 よけるたびに、パタパタって羽ばたきする。

 変だなとは思ったけど、そんなのぐうぜんだ。次の攻撃でしとめられるさ。

「えいっ!」

 スイっ——

 えっ? またよけられた?
 なんか変だぞ。

 僕は用心深く、ガーゴイルのステータスを見なおす。一回、聞き耳すると、その戦闘中は何度でも確認できるんだ。

 えーと? 特技、羽ばたき。
 敵から攻撃を受けると、羽ばたいて回避力をあげる。
 羽ばたいて、回避力……。

 だ、だから攻撃があたらないのか!

「しょうがない。さきにブタさんを倒そう」
「ブヒッ!」

 えーと、ブタさんのHPは3500。なんだ。ぜんぜん、大したことない。防御力は100を切ってるし、これなら僕の攻撃力でもターン内で倒せるね。

「よしっ。一発め!」

 ブンッと剣をふると、オロオロしてるドクターマッドドクターを直撃——にはならなかった。
 サッととびだしてきたガーゴイルがジャマをする。僕の攻撃をよけながら、また羽をパタパタした。

 こ、これって……。

「守る? こいつら、仲間を守ってる?」

 でも、特技には『羽ばたき』しかなかったはずだけど?

 すると、ホムラ先生が顔を出す。
「ガーゴイルは種族特性ってやつがあってだな。レベルがあがると自動で仲間を守るになるぞ。ステータス画面では種族名を長押ししないと見ることはできない」
「ええーッ! 何それ。ズルイ!」

 てことは、ガーゴイルを倒さないかぎり、グレートマッドドクターにダメージをあたえられないんだ!
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