第125話 本戦朱雀組一戦
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背かっこうもそうなんだけど、身につけてるのが、以前、僕のあげたオリハルコンのよろいなんだよね。武器は破魔の剣だ。これも僕がゆずってあげたやつ。
「中堅ってことは、たぶん、大会のためにあのパーティーに雇われてるんだ」
「シャケ兄ちゃん……」
たぶん、三村くんはゴドバを追ってきたんじゃないだろうか? ギガゴーレム戦で逃亡したゴドバを追っていったから。
ということは、やっぱり、参加者のなかにゴドバがいる?
でも、片腕の大男のウワサは聞いてない。もしかしたら、魔物だから変身して姿を変えてるのかも。
「ああ、試合終わったら、すぐ話に行こう」
「そうだな。でも、かーくん」
「うん。何?」
「おれたちの試合、この次だぞ?」
「えっ?」
時間あるかな?
予選のときと違って、各試合のあいだに三十分ずつの小休憩が入る。
だから、そのあいだに話すことはできるはずだ。
「僕、会場ゲート前まで行っておくよ」
「まあまあ、かーくん。待てよ。三村は中堅だろ。そのあと、副将、大将戦がある」
「中堅で三勝しちゃうかも」
「それでも次鋒の試合までは大丈夫だろ」
そうかもしれないけど、僕はソワソワ落ちつかない。
「では、先鋒戦、始めッ!」
朱雀組はさほどのパーティーがいないって前評判だったけど、どうなのかな。
三村くんたちの赤組は典型的なバランスパーティーだ。戦士、僧侶、魔法使い系が一人ずついて、三村くんが盗賊系、もう一人は詩人系だろう。
対する白組は戦士系が三人、先鋒から中堅まで続いてる。副将は賢者か僧侶系。ローブだけど、軽い盾を装備してる。魔法使いは盾装備できないからね。大将はまた戦士だ。
大会は個人戦だから、そのための人選なんだろうな。旅してるときは回復役いないと苦戦するけど、大会中は回復も攻撃も自分一人でしなきゃいけない。それなら攻撃と防御力に優れてる戦士が有利だもんね。
三村くんたちの赤組の先鋒は、パンフレットによれば大僧侶だ。
「大僧侶は猛もマスターしたよね。呪文、何おぼえたんだっけ」
「僧侶で『元気になれ〜』『もっと元気になれ〜』『毒よ、消えろ〜』『しびれよ、消えろ〜』だろ。大僧侶は『みんな、元気になれ〜』『死なないでェー』『みんな、毒よ消えろ〜』『まぶしくないよ〜』『だまされちゃダメ!』とかだ」
「HP回復と状態異常を治すやつだけだね」
「HP回復しながら、こまめに攻撃していくしかないだろうな。戦士は回復魔法使えないから、回復するとしたらアイテムだろ。どのていど数を用意してるかだな」
「だよね」
戦士からしてみれば、僧侶に回復させるヒマをあたえず、大打撃でサッと倒すのが勝利への近道だ。ダメージ量と回復量が
よそのチームなのにドキドキするなぁ。
三村くんのチームの僧侶、よく見たら女の子だ。青い髪で背が高いから、遠くから見て男かと思ったけど、スラッとしてカッコいいクールビューティー!
クールビューティーのほうが先手で動いた。
「もっと固くなれ〜!」
あっ、補助魔法も使えるんだ。魔法書で覚えたんだな。それか、賢者を経由しての大僧侶なのかも。
さらに、もう一回。
「もっと固くなれ〜」
僧侶が防御をかためた。
これは長期戦化しそう。
次は白組戦士の番だ。
ダーッと走っていって、手前から跳躍しながら大上段に大剣をふりおろす。
クール僧侶は皮の盾で刃を受けた。皮の盾が真っ二つに裂ける。クール僧侶はよろめいたものの、さほどのダメージを負ったようすはない。
戦士の行動数は一回だ。
あのクール僧侶、けっこうレベルが高いんだね。それか装備品で素早さを補正してる。
クール僧侶のターン。
「もっと固くなれ〜」
おおっ、三回も重ねがけ。これはそうとうの力じゃないと一撃で大ダメージは与えられなくなったね。
そして、クール僧侶は言った。
「やわらかくなれ〜」
あっ、弱体化呪文だ。戦士の防御力が下がった。
「やるなぁ。僧侶はもともと魔法職のなかでは力も強いほうだし、これで戦士とも互角なんじゃない?」
「そうだな。先手をとれないと苦戦する戦法だけどな。味方を固く、敵をやわらかく。ボス戦ではセオリーだ」
「一戦でMP使いきるつもりでやれば、僧侶のほうが戦士より有利なんだ」
次の戦士のターン、一回しか動けない戦士は、さっきと同じ攻撃に出た。二つになった盾を重ねて、クール僧侶が受ける。ダメージはまったく感じられない。
そのあと、二、三ターン、それぞれ攻撃を続けた。だけど、二回行動できるクール僧侶に対して、一回しか動けない戦士はあまりにも不利。やがて、ひざを折って地面に伏した。
「勝者、赤組先鋒!」
クール僧侶。一勝だ。