第295話 豪のゴドバ戦(進化)3
文字数 1,478文字
いったい、猛はどうしてしまったんだろう?
ゴドバになんかされたって言うより、インフルエンザにでもなったのかって感じ。現実世界でも、猛はインフルなったことないけどさ。
「うーん。もしかして、シャケが作った人形に魂をとられた!」
「ちゃうわ。なんでやねん。タケル、病気なんちゃうか?」
「やっぱり、そう見えるよね?」
あの頑丈な猛が病気。
それも戦闘の最中に。
さっきまでピンピンしてたのにな……。
「ああッ、とにかく、今はゴドバをなんとかしないと!」
「そやな」
ゴドバはもしかしたら、魔法を使えないのかもしれない。だとしたら、怖いのはブレス攻撃だけだ。それも、分身のタケル人形が残ってるから、反射カウンターでかわしてくれる。
ただ、それでも根本的な解決にはならない。どうにか、蘭さんが来てくれるまでの時間をかせぐだけだ。
「とりあえず、タケル人形には鉄壁を使わせてよ。それで全員がブレス攻撃から守られるし」
「よっしゃ! タケル。鉄壁やで」
「…………ギギ」
な、何? 今の?
人形の声か。ちょっと怖かった。
猛ゥー。やっぱり、本物がいいよ。早く気がついてー。
こっちとして、あとできることは少ない。もしものときのために、固くなれなどの強化魔法をかけておくことくらいだ。僕のせっかくの素早さマックスを存分にいかしきれない。
たまりんにはハープを弾いてほしいところだけど、詩人支援の自動攻撃が入ると、ゴドバに吸血・改で力を吸われてしまうかもしれないので、やめておく。かわりに、たまりんはパリピの特技で自分の分身を作った。前衛に出して、クリティカルよけの盾にする。
大丈夫なんだけどね。白虎の守護も反射カウンターもあるからさ。
ところが、次のゴドバのターンだ。大きく息を吸いこむと、ヤツはブレスを放ってきた。さっき、直接攻撃がきかなかったからだ。やっぱり知性は完全に消えたわけじゃない。まともな感情や系統だった思考は失われてるけど、戦いの勘だけは残してる。
タケル人形の反射攻撃が僕らを守って……守ってくれてない!
「うわーッ!」
「やられたー!」
トーマスとアジが倒れてしまった。
「な、なんで? 反射カウンターは、100%敵からのあらゆる攻撃を、そのまま返すんだよね?」
「すまん。かーくん。おれの人形は確率の特技の場合、成功率がさがってまうねんな」
劣化コピーか!
まあいい。ゴドバは一回しか行動できないからな。アジたちは次のターンに生き返らせればいいんだ。それより、気絶したままの猛が心配。
と思ってたら、なぜか、ゴドバは咆哮をあげた。
ん? 動けない。僕らの番のはずなのに、なんで?
「かーくん。アイツの特技、さっきと変わっとるで。のっとる・改や」
「えっ? のっとる・改? さっきまで、ふつうの『のっとる』だったよね?」
「アイツ、もしかして、特技を改造することできるんちゃうか?」
「ええー! 何それ!」
いや、待てよ。よく考えれば、僕だって『小説を書く』で、特技やらなんやら変えることができる。ゴドバにも似たような特性があるかもしれない。
「わかった。進化だ。進化って特技があったよね? あれって、特技を進化させる技なのかも。戦闘中だけかもしれないけど」
のっとる・改は毎ターン『のっとる』が使える。
ど、どうしよう。毎ターン『のっとられ』たら、僕らの行動ができないよ。
もしかして、こういうことなのか。吸血ができることじたいじゃなく、ほんとにヤバイのは、特技を改造されてしまう、この技で、どんどん
進化
されてしまうこと。このままじゃ、ほんとに僕らに勝ちめはなくなってしまう。