第134話 副将戦、決する

文字数 1,531文字


 次はイケメン戦士の順番だ。
 イケメンはまず、「もっと元気になれ」と自分に回復魔法をかけた。
 そっか。回復魔法も使えるのか。魔法書でもおぼえられるもんね。

 じゃあ、残り二回は魔法攻撃だね。みんな、凍りつけかな? 二発で前衛たまりんは全滅だ。

 ん? でも違った。

「凍りつけー!」

 一回、二回。
 たまりんの分身が一つ消えた。
 なんで全体攻撃魔法にしなかったんだろ? 僕ならそうするんだけど。

「かーくん。あいつ、MPがなくなった」
「あっ、そうか!」

 大技ばっかり使ってたから、MPを使いきってしまったんだ。本来、魔道戦士は純粋な魔法使い系の職業にくらべたら、MPは少ないほうだもんね。

 じゃあ、たまりんの番だ。
 ポロン、ポロン、ポロン。
 竹林のエチュード。竹の葉が風にさやぐような曲。
 すると、たまりんの分身たちがいっせいに分裂した。三体がそれぞれ分身したから、本体のたまりんとあわせて七人のたまりん。前衛にいられるのは四人までだ。二人は後衛に入る。

 それで終わりかと思ったら、前衛の分身たちは、また総攻撃をしかけた。

「えっ? なんで?」
「かーくん。竹林のエチュードは詩人支援だよ。詩人職を一つでもマスターした者は、自分の行動数にプラス1で行動できる。あと、補足しとけば、詩神職についてるときは、ハープを装備してると、つねに行動にプラス1されるみたいだぞ。おれもさっき、たまりんのステータス見て知ったんだが」

 し、知らなかった。だから、たまりん、素早さ数値低いのに二回ずつ動くことができたのか。

 総攻撃で、またまた120ダメージ。さっきまでのダメージは回復されちゃったけど、イケメンのMPはつきた。あとはアイテムで回復するしかない。もうさきは見えてきたぞ。

 すると、後衛のたまりん本体が、もう一回、ハープをひいた。
 そうだよね。たまりん自身は詩神特性でもう一回動けるし、それにさっきの竹林のエチュードの効果の行動ぶんも残ってる。このターンは合計三回行動できるんだ。

 けど、なんだ? またたまりんの分身が総攻撃しかけたぞ? あれ? もう動けないはずじゃ?
 あれ、あれ? さらに本体たまりんが二回ハープをひいた。ひきまくってる。演奏めっちゃ上手。聴きほれる。てか、あと行動数一回しか残ってないはずじゃ?

「ああーッ! 6ターンめ、装備品魔法が詩神のバラードだ。ハープに入ってる全部の魔法がいっぺんに発動するんだよ。さっき、六回めひいたから、詩神のバラードが出て、そしたら竹林のエチュードで、また行動回数が一増えて、2ターンめの小悪魔のワルツまでひいた状態なんだ」

 つまり、イケメンは防御力無視の技『小悪魔のワルツ』を二回くらった。そのあと、火炎のルンバで攻撃力二倍になった、たまりんの分身たちの攻撃を再度くらった。

 総ダメージは——

「最初の分身攻撃で120。攻撃力二倍になった小悪魔のワルツ二回で580。さらに二倍分身攻撃で240。合計940ダメージだ!」

 もちろん、イケメンは地に伏してた。

「やったー! たまりん、勝ったよ!」
「やったな」
「ゆらり〜」

 ほとんどハープのおかげって気もするけど、装備品の力も実力のうちだ。がんばって、あちこちのハープ集めといてよかった。

 詩神のハープの装備品魔法って、ターン固定なんだと僕は勘違いしてたけど、ハープをひいた回数に固定だったんだな。最後のターン、あんなスゴイことになるとは想像もしてなかった。何回連続でひいてもいいけど、逆に一回もターン内でハープをひかないと、効果がとぎれて、月光のセレナーデからやりなおしになるみたいだ。

 とにかく、たまりんのおかげで僕らのチームは三勝だ。

「第二試合、白組勝利!」

 やったー。準々決勝進出だー!
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