第57話 ミニゴーレムたちの暴走

文字数 1,694文字



「キャー! うちのミニゴーレムが!」
「はい。助けにきました!」

 スパン。

「誰かぁー! ミニゴーレムに殺されるぅー」
「もう大丈夫!」

 スパン。

 一戦ずつは、あっというまなんだけどさ。問題は貴族区の建物は豪邸ばっかりってとこ。お屋敷のなかを走りまわってると、ムダに時間を食う。

「ロラン。ここは二手にわかれたほうがいいんじゃない? ギガゴーレムを止めに行く隊と、ミニゴーレムを倒す隊」
「そうですね。ギガゴーレムが猛毒ガスを発生したら、みんな死んじゃうんですもんね」

 まったくもう。穂村先生が変なもの作ってくれるから。ブツブツブツ……。

「じゃあ、ロランはミニゴーレムを倒してよ。防御力が心配だから、ギガゴーレムのところには僕が行く」

 それに、ギガゴーレムにはゴドバが乗りこんでる。勇者の蘭さんを危険にさらすわけにはいかない。なんでか知らないけど、ゴドバは僕のことを勇者だと勘違いしてるから、僕がおとりになったほうがいい。そう考えた。

「でも、かーくん……」
「大丈夫。あっちにはワレスさんもいるから」
「うん。僕もなるべく早く追いますから」

 というわけで、僕らはまた、盗賊団のアジトのときと同じメンバーにわかれる。今回は僕が猫車をもらった。

「さあ、ぽよちゃん、たまりん、ミニコ、行くよ。ホムラ先生も来てください」
「うむ。戦闘は任せたよ」
「はいはい」

 馬車が走りかけたときだ。
「バーン」
 シルバンが追いかけてきた。ミニコのことが心配だったのかな?

「えーと、ロランにはアンドーくん、バラン、クマりん、ケロちゃんにモリーがついてるか。四人パーティーと後衛もいるね」

 ミニコは僕の付属品あつかいだけど、こっちもこれで実質五人だしね。ほぼ同数だ。先生はNPC。しかも戦わないけど。

「よし。じゃ、あらためて行くよ!」
「おれも行く! 兄ちゃんに会いたい」
 アジもついてきた。

 豪邸の建ちならぶ敷石された道を猫車は走っていく。
 そのあいだ、ホムラ先生がつぶやいていた。

「うーん。変だな。ミニゴーレムたちがいっせいに暴走し始めた。ということは、研究所が襲われたときと同様、遠隔操作装置の周波数を増幅している。おそらく、ギガゴーレムに連動させているのではないかな?」
「そうなんですか?」

「しかし、ミニコは影響されてない。研究所のときもそうだったが、ミニコはなぜ遠隔操作されないのだろうか?」
「えーと、なんででしょうね?」

「何か、ほかのミニゴーレムとは違うことをしたはずだ」
「プログラムFですか?」
「いや。プログラムFは単にゴーレム同士の同調性を高めるものだ。遠隔操作をブロックする機能はない」

 ふうん。なんでかなぁ。
 思いあたるふしがない。

「そう言えば、ミニコって最初はギガゴーレムみたいに人間の言葉を話したんですよねぇ。なのに、いつのまにか『ミ〜』としか言わなくなって」
「ミ〜?」
「あっ、いや、いいんだよ。ミニコ」
「ミ〜ミ〜」
「バーン」

 猫車のなかはにぎやかだ。
 走る。走る。
 しだいにギガゴーレムが近づいてきた。

 ギガゴーレムはドシン、ドシンと地響きをとどろかせながら一足ずつ進み、手近な建物をパンチで破壊している。

 足元で進行をとめようとしている一隊がいた。
 ワレスさん? いや、違う。カフェオレみたいな髪色の細身だけど背の高い隊長だ。
 あっ、誰かわかった。あのイメージはユージイだ。ひょうひょうとして、つかみどころのない感じが現れてる。

 僕は手をふって彼らに近づいていった。全員で十人くらいかな。軍隊にしては少人数。

「ユージイさんですよね?」
「おお、あんたは?」
「かーくんです」
「えっ? あんたが、かーくん? 勇者ロランパーティーの?」
「えへへ」

 あれ? 喜んでいいのかな?
 もしかして、あんまり強そうじゃないって意味?

「隊長がハニークレイジーって呼んでたけど……」
「えっ? ワレスさんが?」

 ハニークレイジー……なんだか嬉しくない二つ名。
 そう言えば、前、僕の戦いぶり見て、ぽそっと「クレイジー」って言ってたような。

 いやいや、そんなこと気にしてるときじゃなかったぞ。

「ギガゴーレムは今、どうなってるんですか?」
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