第118話 予選一日め
文字数 1,692文字
さて、僕らの先鋒は僕。
次鋒、アジ。
中堅、クピピコ(ぽよちゃん)。
副将、たまりん。
大将、猛だ。
たまりんがなんで人間としてカウントされるのか、よくわからない。そういえば、たまりんは転職もできるよね。
やっぱり、ほんとは人の魂……? こ、怖いからっ。
受付してるうちにも、会場のなかはにぎやかになってきた。さきに受付すませたパーティーが戦ってるに違いない。
「ああ、いいな。大会、見たい」
「参加者のみなさんは自分の順番の二つ前までには会場に集まっていてください。その前ならご自由に観戦できます」
「わかりました」
僕らは会場の見取り図や、戦いにおいての禁止事項を書いたパンフレットを受けとった。
「えーと、蘇生魔法でも生き返らないダメージを負わせることは禁止。相手に後遺症(ステータスに傷をつける)行為は禁止——あっ、つまみ食いはダメってことか」
「まあ、そうだろうな。人間相手だし、さすがに共食いだろ」
「ほかは装備品や所持品を盗む、破壊する行為は禁止」
「装備品って傷ついても戦闘終わったら自動修復するよね?」
「通常攻撃ならな。特殊な個人の特技には完全破壊するやつがあるのかも。おれらのつまみ食いだって、ふつうはあっちゃダメなやつだろ?」
「ははは……」
まあ、そりゃそうだ。
観客席は指定席と自由席があった。僕らは自由席にまぎれこんで見物する。
「会場が四つにわけられてるんだね」
「同時進行して手早く終わらせるためだな。本戦はたぶん、一戦ずつ会場全体を使うんじゃないか?」
東西南北で四つに仕切られてる。上から見るとせまいような気がしたけど、それでも一つの会場で二十メートル四方はあるかな。
「西側が白虎組だね。今、三番だ。まだまださきだね」
白虎組はかなり数が多いみたいだ。だけど、こうやって見るかぎり、さほど強そうな人はいないなぁ。
と思ってたら、北側の会場近くで、どよめきが起きた。なんだろうと思って見るけど、そのときには地べたにすわった戦士がいるだけで、何が起こったのかよくわからない。
「誰かスゴイ攻撃したのかな?」
「みたいだな」
「玄武か。予選であたることはないけど、本戦になったらあたるかも」
「ああ。今、五番の札があがったから、その前の戦いってことだ。四番だったヤツだな」
ほかには、これってほどの人はいないみたいだ。もしかしたら、うちと同じで強い人を大将にして隠してるのかもしれない。
「あ、猛。白虎組、二十番が対戦終わったよ。そろそろ行かないと」
「そうだな」
僕らは階段をおりて、観客席からバックゲートへむかう。
そこで、ゲート前に立ちはだかってる巨人にぶつかってしまった。
イテテ。あんまりデカくて壁かと思った。
「す、すいません」
謝りながら見あげる僕を、男はマントのフードの下から、ジロリとにらんでくる。ウッ。怖い。
それにしても、身長高いなぁ。二メートルはあるよね。マントの下から見えてる二の腕もすごい太さだ。僕の太ももより太いかも?
「あの……すいません」
僕がタジタジしてると、ズイッと猛が前に出る。
「おい。謝ってるだろ? だいたい、出入口につったってるあんたも悪いんだ」
ああっ、猛ゥー!
僕の守り神。頼りにしてるからねぇ。
男はフンっと鼻をならして去っていった。観客席のほうへ歩いていく。
「強そうだったねぇ」
「あの筋肉が飾りでなきゃな。こっちでは必ずしも筋肉量が力の数値と一致してるわけじゃない」
まあ、そうだ。
ちなみに特訓した僕の今の数値はコレだ。
レベル56(大富豪)
HP4337『3924』[4553](5008)、MP1129『748』[1185]、力524『452』[602](662)、体力478『329』(525)、知力570『277』、素早さ501『327』[576]、器用さ555『295』[638]、幸運99998(99999)
マスターボーナスでHP、MPに5%、力、素早さ、器用さにそれぞれ15%のプラス補正がついてる。その上に大富豪の職についたボーナスがHP、力、体力にプラス10%、幸運で20%だ。
ん? 僕、幸運がふりきってる……。