第241話 出発! 謎の大陸へ
文字数 1,966文字
ついにこの日が来た。
宿敵ゴドバを倒すために、居城へと旅立つんだ。
朝が来て、みんな万全の準備で集まる。なんと、蘭さんがスズランちゃんをつれてきた。
「あれ? スズランさん。お母さんの看病してるんじゃなかったの?」
「聞いて。かーくん。お母さまのぐあいが最近、すごくいいんです。お医者さまも、もうふつうの生活に戻っていいって。だから、スズランも今回の遠征についてくるんです」と答えたのは、蘭さん。
こっちがスズランね。
「わたしがいれば、遠征中でもみなさんを転職させることができます。祈りの巫女ですから、そのくらいのお役には立たないと」
正直、かなり強くなった僕らの仲間としては、スズランの戦力はかなり低くなってしまってる。けど、いつでもどこでも転職できるのは嬉しいことだ。とくに初めての転職は、神殿で祈ってもらうしか方法がない。
「じゃあ、お願いします」
はぁ。やっとパーティーに人間の女の子だ。それも美少女。個人的にはセイラのほうが好みだけどさ。あっちはもう恋人いるし。
朝食が終わったころ、僕らを迎えにやってきたのは、クルウだ。ワレスさんの右腕だもんね。
「もしかして、クルウさんも行くんですか?」
「はい。こちらからも2パーティー用意しています。ワレス隊長の隊、私の隊です」
「それは心強いです」
「いえ。あなたがたの数値の上昇にくらべたら、まったくです。なんだか特殊な技があるのだそうですね」
「あっ、昨日、今までの小説は書いといたんだけど、まだ電力があまってる。出発前にホムラ先生の研究所によって充電させてもらえるなら、今、クルウさんの数値もあげますよ」
ワレスさんは一回レベルさげたあと、とくに何にも要求してこなかったなぁ。そう言えば、猛もツボやお金はねだるけど、小説を書くで数値あげろとは言わない。二人は自分で鍛えたい派か。
クルウはどうかなと思って見てると、
「はい。お願いします」って答え。
蘭さんと同じ合理主義者だ。
「たぶん、クルウさんなら三万たせると思います。なんの数値をどれくらいあげますか?」
これまでの仲間への書きこみでわかったことがある。
十万、書きかえられるのは、僕と蘭さんだけだ。自分はともかく、蘭さんは選ばれし勇者だからだと思う。
あと、仲間の人間は一人三万まで。NPCは不可。仲間モンスターは一万ずつ。
仲間じゃない人間は千から二万ってところ。僕との親密度によって、数値の上限が決まるらしい。
クルウはパーティーの仲間じゃないけど、僕が書いてる小説のキャラクターだ。愛着がある。だから、ほかの人より書きこみが多くできるはずだ。
「そうですね。三万なら、二万を体力に、一万をHPにお願いします」
「はいはい。やっぱり、パーティーを守る壁役だからですね。あれ? まだ書けるな。あと五千くらいなら」
「では、力と素早さに二千五百ずつ」
「はいはい。力と素早さに二千五百ですね。ほかにも書きかえる人がいますか? あと40%残ってるから、二人は変えられるけど」
「ホルズと司書長を」
「わあっ、司書長もいっしょなんだ! 可愛い女の子が二人も! やっと呪いがとけた!」
「呪い? なんのことです?」
「女の子がパーティーに入ってくれない呪いです」
「…………」
クルウに笑われてしまった。
「隊長がハニークレイジーとおっしゃるわけがわかった気がします。それにしても、司書長が女性だと、よくご存じでしたね」
「うん。まあ、彼女も複雑な家庭環境なんだよね。今風に言えば合法ロリって言うの? 成長がものすごく遅くて、子どもの姿のときしか魔法が使えない家系」
「さようですか? 聞いたことがないです」
たしか、ユニコーンの末裔なんだよな。本人はそのことを隠してるかもしれない。
クルウに案内されて、城門まで行くと、司書長ほか、メンバーがそろってた。
司書長は予想どおりの美少女だ。栗色のストレート髪の大きな目の十三、四の女の子。清純だなぁ。だけど、実年齢はワレスさんのお母さんくらいらしい。
ホルズは僕の小説のなかでも、ワレスさんの部下だ。なるほど。マッチョだなぁ。背なんか百八十五センチの猛より高い。
「司書長のダグラムです。よろしくお願いします」
「かーくんです。よろしく! じゃあ、司書長はMPと知力でいいですか? 魔法使いは防御力低いから、体力もちょっとだけあげときます? サービスで千くらいは多めに書けそうな気がする」
「はあ? よくわかりませんが、あなたのことはワレス隊長から聞いております。信頼いたしますよ」
「知力に三万。MP五千。体力と素早さに千ずつね。ホルズは力一点ふりでいい? 体力もあげたほうがいい? 二万しか書けそうにないから、力に二万ね。あ、おまけで五百だけなら素早さあげられる」
「おっ? おお」
電力つきた。
研究所よってかないと。