第58話 ギガゴーレムを止めろッ!
文字数 1,823文字
目の前のギガゴーレムは赤い目を点滅させて、あばれてる。
えーと、お腹の丸い窓のなかには……いた! ゴドバだ。覆面かぶってるけど、そうだ。あのデフォルメ過多な超マッチョ逆三角形体型。前に見たゴドバそのものだ。
三村くんはどこかな?
いたいた。まだハシゴにしがみついてる。コックピットの真下にいて、なんとかなかへ侵入しようとしてるみたいだ。
ワレスさんはどこにもいない。変だな。
「ホムラ先生。どうやったら、ギガゴーレムを止められるんですか?」
「ふつうに戦闘したらどうだね?」
「えっ? それだけ?」
「はっ? それだけだが?」
「じゃあ、先生。何しについてきたんですか?」
「見物だよ?」
「…………」
しょうがない。
戦おう。
「ユージイさん。僕たちギガゴーレムと戦うので、周囲の住人を避難させてもらっていいですか?」
「大丈夫。この周辺の住民はすでに、おれたちが避難させた」
「じゃあ、僕たちが全滅したら、あとのことはお願いします」
まあ、全滅する気ないけどね。今度こそ、傭兵呼んじゃうよ?
「よし。じゃあ、みんな行くよ? たまりんは馬車に入って、後衛から援護お願い」
前衛は僕、ぽよちゃん、シルバン。付属のミニコだ。
ピュ〜と背後から聞こえた口笛は、ユージイだろうな。僕の戦いかたを見たいんだと思うけど、ごめん。一瞬で終わるから。
ギガゴーレムにむかって走りだす。ボス戦の音楽が聞こえた。
ジャラーン、ジャラーン!
ギガゴーレムが現れた!
あっ、今回は三村くんが敵方に入ってない。戦闘離脱した形なんだ。ゴドバも入ってないぞ。これなら、僕らだけでも勝てる。
「ぽよちゃん、念のため、聞き耳」
「キュイ!」
えーと、ギガゴーレム、レベル10……えっ? レベル、あがったんだ。さっきの戦いで逃亡したのに、なんで?
HP99999、MP0、力5000、体力99999……。
ちょ、ちょっと待ってよ。なんだこれ? HPと体力がマックスなんだけど? いや、防御力はもともとマックスか。やっぱり99999以上にはならないんだ。
「ホムラ先生。ギガゴーレムのHPがマックスです」
「ほう。レベルがあがったんだな。いやぁ、我ながら、いい出来だ。素晴らしい。国防の要になる」
「敵に奪いとられたらおしまいでしょー」
うーん。防御力が十万の敵に対して、僕の傭兵呼びはきくのか? たしかあれって防御力無視の攻撃だったよね?
僕がしとめそこなったら、ギガゴーレムのターンで5000攻撃力とんでくるからね?
「防御力マックスじゃ、ロランの五万攻撃でも1000ダメだもんね。さっきのHP一万のときなら、まだ可能性あったんだけど」
つまり、まともな攻撃では倒せない。
「じゃあ、僕がやりそこなったら、シルバンはミダスタッチ。もしかしたら石化攻撃、きくかもしれない。ぽよちゃんは、どうしよう。ためるかな。たまりんは補助をお願い」
モンスターたちに命じておいて、僕は自分のステータス画面で所持金を確認する。
盗賊団のアジトから銀行によらずに来たからね。その上、エレキテルの街のなかも敵が出現するからお金ひろったし。
今の所持金は……なっ、七千億円か。これまでひろったなかで最高額だ。傭兵呼びしたら、一回で七十億円……もったいない。早く小切手を切るって特技、使えるようになりたいもんだ。
「七百万で充分なんだけど、しかたない。傭兵呼び〜」
進軍ラッパの高らかな音とともに、東京都の全人口くらいの人だかりが現れた。
たとえ防御力無視攻撃でなくても、このうちのたまに出るクリティカルヒットだけでも、ギガゴーレムのHPは完全にけずりとられたであろう。うん。
それくらいスゴイ数の人だった。たぶん、ギルドに登録したすべての人が現れては、狂喜しながらギガゴーレムを叩いて消えていった。
なんか、ドサクサまぎれにホムラ先生がミャーコの吐きだした金貨の山をひとかけポッケに入れた気がしたけど。
「ああっ、今のワレスさんじゃなかった? ワレスさんも傭兵呼びに登録してるんだ?」
「いえ。さすがに隊長はしてないはず」と答えたのはユージイ。
「えっ? でも、金髪のスゴイ美形がいたよ? どう見てもワレスさんだったけどなぁ」
「あっ、すいません。おれもいっちょ、なぐってきますんで——おら、やろうども。行くぞ!」
「おおーッ!」
ああ、ユージイ隊も登録してるんだ。
チャラララッチャラ〜
おかげで、ギガゴーレムは停止した。
やったね。戦闘勝利だ。