第39話 三村くん(筋力増強アーム)戦2
文字数 1,553文字
「行きます! シャケ、覚悟してください」
蘭さんはお行儀よく断ってから、先制攻撃を放った。武器はクィーンドラゴンのムチに持ちかえてる。そんなにムチが好きか?
三村くんの素早さは補正されてても170。
対する蘭さんは275。だけど、これが流星の腕輪のおかげで二倍になってるから、実質は550だ。三村くんの約三倍の速さだ。
つまり、蘭さんはターン内で三回行動できる。五万攻撃が三回だよ?
もう絶対、蘭さんだけでキマるよね。僕らまで順番まわってこない。
ところがだ。
「あれ?」
ピシッ、ピシッ、ピシッと鳴る蘭さんのムチで倒れたのは、三体のミニゴーレム。完全に目をまわしてる。三村くんには傷一つついてない。
「なんででしょう。たしかにシャケを狙ったのに」
僕は気づいた。
「わかった! 仲間を守る、だよ。ミニコも仲間を守るプログラムがあった。ミニゴーレムたちはシャケをかばったんだ」
これはマズイぞ。
守る×500体だ。
ミニゴーレムすべてを戦闘不能にしないと、三村くんまでたどりつけない。
こっちは蘭さんがスティール板防御なのに、筋力増強アームで強化された三村くんの攻撃くらったら倒れてしまう。
僕は急いで指示をとばした。
うちってダブルヘッドだよね。
「たまりんは詩神のハープ。ケロちゃん水の結界で援護。ぽよちゃん、『みんな、巻きでいこう〜』で、アンドーくんは回復必要になるまで待機。モリーはロランに変身して『みんな、行くよ〜』でお願い。バランとシルバンはロランを守る」
「はい!」
「キュイー!」
「ケロケロ〜」
みんなで行くよ〜っていうのは、蘭さんの勇者専用呪文だ。なんと、パーティーメンバー全員がそのとき使える最強技をぶっぱなすという恐ろしい反則技。それも術者のほかはMPを使用しない。今の場合、モリー以外はMPを使わず最強技を使えるんだ。その上、補助魔法あつかいなので、後衛からでも使えてしまう。
「あっ、でもその前に、ロラン。預かりボックス貸して」
「そうですね。総額なげやっちゃうと、かーくんが無一文になりますね」
そうなんだよね。総額なげは所持金全額なげちゃうから……。
急いで、蘭さんの預かりボックスに僕のお金たちを入れさせてもらった。このボックスに入れておけば、とりあえず僕の所持金とはみなされない。
よしよし。これで手元は三百万円になったぞ。総額なげても一千億円以上が残る。まだまだ傭兵呼びができる。
後衛から攻撃できるのは弓使いだけだけど、こういうのを見こして、仲間モンスターたちの職業は弓使いのままにしてある。そもそも本来はモンスターは職業につけないから、しょっちゅう変える必要がない。
というわけで、僕らはそのあと、蘭さんそっくりに変身したモリーの号令で、いっせいに最強技をくりだした。自分の行動の終わった蘭さんだって、この呪文を唱えられると、また行動できてしまう。
「ブレイブツイストー!」
「総額なげ!」
「ミーミミーミー!」
「キュイー!」
「騎士道!」
「燃えつきろ〜」
「まー!」
「ケロケロッ!」
「バーン!」
このへん、必殺技を叫んで効果音を入れたら、戦闘したっぽく見えるっていうラノベ方式になってるな。
僕の総額なげあたりで、すでにミニゴーレムは全部倒れてたんだけど。
なんか、いくつか僕の知らない技もあった。バランの騎士道ってなんだ? ケロちゃんは水を吐いた? そんな技、いつのまに使えるようになってたんだ。
とにかく、三村くんは瀕死だ。さすがにミニゴーレム五百体でも守りきれなかったか。
計算得意な人には予想ついてたと思うけど、じつはまだ僕、自分の行動の順番が残ってる。素早さ数値もあげといたから、十五回は行動できるね。
三村くん、チョンっとタッチしたら倒れるでしょ?
もう終わらせてあげるからね。