第49話 三村くん(起動中ギガゴーレム)戦2
文字数 1,536文字
ギガゴーレムは体高三十メートル。横幅もけっこうある。ガッチリした、ずんぐりむっくり体型。重さもパワーもありそうだ。
ピカピカとゆっくり点滅する目の色は黄色い。
「あの目が黄色から青になると起動。青から赤くなったら、破壊モードに入った証拠だ。黄色か青のうちに停止させなければならない」
ワレスさんにそう言われ、僕らは身がまえる。
いつもどおり、最初は自動発動の薔薇だ。ケロちゃんは今、馬車のなかなので、次は蘭さんの先制攻撃かな?
と思ったけど、蘭さんが首をかしげた。
「あっ、僕の先制攻撃はもう出ません」
ワレスさんが解説してくれた。
「先制攻撃は戦闘開始直後に一度だけきく技だ。次のターンからは素早さ順になる」
ということは、僕?
いや、ワレスさんの順番か。
「すいません。ぽよちゃんの聞き耳を使わせてください」
「ああ。いいよ」
おゆるしが出たので、聞き耳。
ギガゴーレムのレベルは1だ。よかった。それなら、さほど強くないはず。
でも、HPは一万か。ボスだけあるな。一万はそうとう強い神獣やドラゴンの数値だ。
魔法は使えないみたいだけど、特技は火炎放射、ロケットパンチ。こっちはちゃんと、パンチって書いてある。パンツ飛ばすわけじゃない。
ほかはクラッシュビームと……猛毒ガス発生装置?
な、なんておぞましい技を。
「ワレスさん……ギガゴーレムに猛毒ガス発生装置って技があるんですけど」
「猛毒ガス? そんなものあるわけがない。ギガゴーレムは魔物に襲撃されたときの守備用に開発許可したんだ。魔物も生物だから倒れるだろうが、総じて人間より毒耐性が強い。むしろ、そんなものつけたら、人間のほうがバタバタ倒れてしまう。国防にならない」
と言ったあと、ワレスさんは
「……あるな」
「ありますよね?」
「ある」
なんで、そんな人間を大量虐殺するための装置なんか持ってるんだ? 穂村先生、まさか人間を皆殺しにする気か? もとの世界で正体がアレだから?
「とにかく、停止させるぞ!」
「はい!」
ギガゴーレムはまだ動かない。起動中は攻撃してこないんだ。今のうちに倒さないと。
まず、ワレスさんが攻める。
通常攻撃だ。なぜに通常攻撃? キメ技じゃないのか。
でも、ガツンとすごい音がした。ギガゴーレムのHPが300けずれる。
あれ? 300? ワレスさんの力なら、もっといきそうなもんだけど。
「あーあ。やっぱり僕じゃないとダメみたいですね。早くすませて、どいてくださいよ」
蘭さんは笑って言うんだけど、なんか、ワレスさんのようすが変だなぁ。人前でバカにされたんだから
だまって十数回、攻撃をかさねたあと、ぼそりと言った。
「そう思うなら、やってみろ」
素早さ的には僕がさきだけど、蘭さんに行動の順番をゆずる。
「じゃあ、行きます。ブレイブツイストー!」
ブレイブツイストは剣技と魔法の合わせ技だ。攻撃に魔法を帯びさせることで、与ダメを通常の数倍に高める勇者の最強攻撃。
力が五万になった今の蘭さんなら、きっと、ものすごいダメージだ。ダメージ上限値ふりきっちゃってワンパンだろうなぁ。
なんて思ってたのに、な、なんで?
ド派手な双竜の光がねじれ、からみあいながらターゲットを襲う演出のあと、ギガゴーレムは……立っていた。
HPを確認する。
残り4500——
えっ? まだ4500も残ってる?
ちょっと待ってよ。
ワレスさんが300×15回ダメージで、合計4500。
ってことは蘭さん、1000しか削れなかったんだ? でも、力五万だよ? じっさいのダメージはレベルと敵の防御力が関係してるみたいだけど……。
まさか、ギガゴーレムの防御力、めちゃくちゃ高い?