第278話 そのころのノーム村
文字数 1,572文字
さて、僕は亡霊店主から、話しかけると、いつでもどこでも店主を呼びだせる魔法のランプをもらった。三回こすると出てくると言う。完全に何かのパクりだが、アラビアンなナイトは古典だ。著作権は生きてないから大丈夫!
僕らはとにかく一階までかけおりて、城の表門から外へ出た。ゴドバやワレスさんはどこへ行ったんだろうか?
「かーくん! あれだ。あそこにいるぞ!」
猛が指さしたのは、森のなかに立つ巨大な塔のようなものだ。百メートルはあるんじゃないかなぁ? さっきより、さらにデカくなってる。
「ノーム村のほうだ。大変だ。村が襲われる!」
ぽよちゃんたちが残ってはいるけど、心配だよ。あんなに大きくなった化け物みたいなゴドバ相手に、ぽよちゃんたちだけで村を守れるだろうか?
「急ごう! 猛。シャケ」
「ああ」
「行くで!」
僕らはけんめいに馬車を走らせた。とは言え、片道に一時間はかかってしまう。どんなに急いでも四十分だ。その間は、ぽよちゃんたちにすべてがかかってる。
というわけで、そのころのぽよちゃんたちだ。
前の冒険録でも、たまに僕以外の視点をとってたけど、ここでまたそれをするときが来た。
以下、ぽよちゃん!
*
キュイキュイ。キュイキュイキュイ……あっ、ごめん。ぼくは、ぽよ。ぽよぽよ語ではわからないよね。
ぽよぽよ族のぽよだ。
仲間のかーくんからノーム村の警護を任されている。
かーくんが出ていったのは、お日さまが空のまんなかのときだった。もうすぐ、お日さまは落ちて、今夜のねぐらへ帰るころだ。
かーくんたち、遅いな。まだかな。お城で戦ってるのかな?
ノームたちはだいぶ元気になってきたけど、戦える人は少ない。体も小さいしね。ぼくがしっかり守ってあげないと。
でも、体力の補給も大事だ。村の空き地に生えたぽよぽよ草を、モシャモシャかじってたときだった。ゆらゆらしながら、たまりんさんがかけてきた。
「ぽよちゃん! 大変よ。大きな何かがこっちにむかって飛んでくるの」
「大きな何か?」
「邪悪な匂いがするの。お城の魔物かもしれない」
「それは大変だ。みんなに知らせないと」
ぼくは急いで村の外へとびだした。そして、目を疑った。空いっぱいを覆うようにして、大きな大きなものが、こっちに飛んでくる。魔物みたいだ。あんなに大きな怪物は生まれて初めて見る。
「たまりんさん。あれは、なんだろう? ギガゴーレムよりもっともっと、ずっと大きいよ?」
「私も見たことないわ。あれにふみつけられたら、ノームの村なんて一瞬でつぶされてしまう」
うん。そうだ。これは困ったぞ。村の上に来ませんように。
トーマスやアジたちもかけてきた。人間語でアレコレしゃべってる。トーマスとアジは、ぼくの弟分だ。ナッツもね。ぼくよりあとに仲間になったんだから、ぼくのほうがお兄ちゃんだ。
「みんな、アイツからこの村を守るよ。しっかりするんだ!」
ぼくが号令をかけると、トーマスはうなずいた。
「とにかく、私たちしかいない。ここは私たちで守ろう」
「うん。わかったよ。ナッツ。君は村のみんなを避難させて」
「でも……」
「ノーム族には子どもがたくさんいる。アイツに見つからないように、今すぐ隠れさせるんだ!」
「わかったよ。アジ、気をつけてね」
「お、おれは大丈夫」
アジはなんだろう? 顔が赤いな。
とにかく、ナッツはノームの人たちを避難させるために去っていった。
これで、こっちのメンバーは、ぼく、たまりんさん、トーマス、アジ、それに気まぐれなネコりんたち四人だ。ネコりんたち、気まぐれを起こさずにちゃんと戦ってくれるかな?
ああっ、怪物がやってきた。
ノーム村のすぐ近くにおりたつ。
アイツ、ノーム村の場所が見えてるみたいだ。鳥みたいに空の上から見つけてきたんだな。
ジャラーン、ジャラーン!
戦闘音楽が鳴り響いた。