第268話 封じられた大技
文字数 1,583文字
ええ、ええ。わかりましたよぉ。転移のかかわる技はダメってことね? じゃあ、もしかして、魔王と戦うときだって、小切手を切るは使えないってことかな?
うーん。こうなると、僕も真剣にほかの技を鍛えないといけないかなぁ? 肝心のときに使えないんじゃ意味がない。
「わかった。じゃあ、今回は断捨離で。断捨離、五万!」
はい。これで僕の素手攻撃力は五万ね。二発ほど、ちょい、ちょいとすれば勝てるよ。
「えい! とう!」
壁に向かって、こぶしをたたきつける僕。へへへ。ワイルド〜!
「ははは。かーくん。いじけて壁にやつあたりする中坊みたいだな」
「かーくん。へっぴり腰やで」
なんで笑うんだ? わけわかんないんだけど。
でも、これで壁は倒れた——はず?
魔改造の壁は最終防御体勢になった。
ヘッチャラさ〜を発動した!
「ああっ、ズルイー! ちゃんと十万攻撃でHPゼロにしたのにー!」
「かーくん。しかたないよ。イベント的なやつだろ。ちょっと待とう」
「でも、早くふえ子のお母さんを助けないと」
「あのケージを壊せないかなぁ?」
「やってみる」
パンチ一っ一発ー!
「ウギャっ。なんかキモイ。力が吸いとられるー!」
断捨離してたから、そのぶんの五万が吸収されたみたいだ。よかった。なんにもないときにさわってたら、基本のステータスからとられてた。
「ちょっとどいてろ。ギガファイアーブレス!」
猛がてっぺんから伸びたケーブルを狙ってブレスを放つ。ケーブルが焼ききれれば……ダメだった。炎はまたたくうちにケーブルに飲みこまれた。
「……外からの攻撃は全部、吸収されてしまう。しかも、素手でさわると、こっちの数値を奪われる。手の出しようがないな」
なんて、猛が言うんで、もうどうしたらいいんだか。
「ど、どうしよう。壁? 壁のヘッチャラさがとけるのを待つ? 早くしないと、ふえ子のお母さんが……」
もともとグッタリしてたけど、見ているあいだにも、どんどん衰弱していくのがわかる。このままじゃ、死んじゃうよ。
「えい! えい! この壁め!」
僕は何度も素手でなぐるんだけど、ぜんぜん効いてない。
「あっ、さっき、断捨離の五万攻撃力は吸われたんだっけ。また断捨離しとかないと」
「いや、それ以前にコイツの無敵をなんとかしないと」
「早よせんと、死んでまうで」
あせる僕らをよそに、さっきから、ドンドンとあばれるあの振動がますます強くなる。
いったい、なんだって言うんだろう? だって、ふえ子のお母さんはグッタリしてる。ズシンズシンと振動してるのは、壁なのかな? 魔改造だしね。でも、壁に手をあてても、そんな感じは……ん?
「あれ? 壁のむこうから、何やら振動が……」
「うん? どれ? あっ、ほんとだな」
ドンドンとたたくようなソレが、しだいに強くなり、いきなり目の前の壁がくずれる。向こう側から剣がとびだしてきた。僕はしりもちをついた。
「ギャー! 壁が襲ってきたー!」
「違うだろ。ほら」
チャララララ〜。
戦闘に勝利した。
経験値五千、三千円手に入れた。宝箱には壁の基盤が入っていた。壁の基盤を手に入れた。
「壁の基盤……いらないなぁ」
「ミ〜」
「あっ、ミニコがかじった!」
そっか。また歯車的なやつだったか。でも、魔改造された壁の基盤なんか食べて、ミニコが変にならないよね? 急に仲間を襲ってきたり……?
「ミー!」
あっ、ほら。襲って——は来なかった。嬉しそうに踊ってる。
「かーくん。ミニコが吸収の壁って特技おぼえたぞ」
「何それ?」
「戦闘中、敵から受けた攻撃をすべて吸収する防御壁。受けた攻撃は自分のステータスとして加算される」
「わぁ、スゴイね! ミニコ。よかったね」
「ミ〜」
それはある意味、無敵よりスゴイ。
「それにしても、さっきの剣は?」
すると、ガラガラとくずれた壁のなかから、何かが現れた。
ギャー! 出たー! オバケ?