第32話 研究所長だった
文字数 1,422文字
「ミニゴーレムを購入してくれたんだね。ありがとう。これで私の研究費用の足しになる。私はこの研究所の所長、ホムラだ」
僕はハッとしたね。
「穂村先生!」
「ん? 発音が硬いな。ホムラだよ」
そう。穂村先生だ。
まさか、
彼
だったとは! たしかに、よく見れば、これは穂村先生だ。このガリガリぐあい。ボサボサ髪。押しの強さ。彼も僕が書いてる小説のなかの一人だ。
『宇宙は青蘭の夢をみる』旧題『八重咲探偵の怪奇譚』に出てくる変人の大学准教授。しかし、こう見えて、その正体は……なんだけど、興味があれば本編で読んでください。第五部から出るよ。
「ホムラ先生。さっそくお願いがあるんですが……」
「おっ、しまった。早く行かんと、ギガゴーレムをヤツらに奪われてしまう。君たちも力を貸しなさい」
「ギガゴーレムですか?」
聞いただけでデカそう。
それに、ヤツらって?
「うむ。ギガゴーレムはこれまでのゴーレム研究の
「それは、とても強いんですか?」
「もちろん、強い! アレが暴走すれば一国なんぞ、かんたんに滅ぼせる」
うーん。そこはかとなく、イヤな予感。
「ヤツらって言うのは?」
「ついさっき研究所に現れた不審者どもだ。ヤツらが現れると同時に、所内はモンスターだらけになった。何者かがあやつっているに相違ない」
そうじゃないかとは思ってたけどね。
これはもしや、魔王軍の仕業だろうか?
そのわりに出てくるのは野生のモンスターばっかりだけど。鉄クズメインに、ミニゴーレム、ブリキ人形だ。
「きっと、その場所に敵のボスがいますね。行きましょう。僕の防御力五万のために」
蘭さんは、はりきって階段をのぼっていく。じゃっかん私欲がまじってる気がしなくもない。
「だけど、ロラン、さっきレベルアップしたよね? 防御力もあがったんじゃない?」
「あっ、そうですね。レベル……うわっ、スゴイ。いっきに36になってる! レベル8もあがったんですね」
50万経験値だからね……。
僕だって6レベルあがってる。
どれどれ。蘭さんのステータスを見ると——
レベル36
HP326(358)、MP175(192)、力50032、体力29、知力175(192)、素早さ247、器用さ170、幸運184。
ああ、レベル8もあがったにしては、HPの伸びが悪い。やっぱり体力がさがっちゃった影響か。早くもとに戻してあげないと。
でも、体力じたいは29になってる。もとの91のままなら、今は120になってたはずなのに。防御力90違うのは大きい。
「紙からダンボールくらいにはなってるね」
「ううッ……」
「あっ、ごめんよ。だから悪気はないんだって」
それでも、少しはマシになった。ザコ戦はこれでちょっとは耐えられる。あとはボス戦だなぁ。蘭さんの五万攻撃力は活かしたいとこだけど、後衛にいてくれたほうが無難かも?
さてと、二階に来たよ。
研究所は三階建てだから、そっちも行かないと一階の奥には進めない感じかなぁ?
僕らは慎重に歩いていった。
蘭さんが正気になってくれてよかった。
「ところで、ホムラ先生。敵の姿を見たんですよね? どんなヤツらでした?」
魔王軍なら出てくるのは、竜兵士とか、ガーゴイルとか、ミニドラゴンとか、そういうのだ。
でも、ホムラ先生は言ったね。
「うーん。目つきの悪いならず者だったな。盗賊とか、山賊とか、そんな感じだろう」
盗賊に山賊?
それって、まさか……?