第291話 首発見
文字数 1,589文字
力をつまみ食いして、無力になった右足を外につれてった。これで、あとは首だけか。
「猛。ようすどう?」
「とくに変化ないな」
このまま地中に埋めるわけにはいかないんだろうか? それか、石化しちゃう。シルバンかケロちゃんがいれば……。
どっちみち蘭さん待ちだ。パーティーメンバーをもっと考えて組んどくんだったなぁ。
「じゃあ、首、探してくる!」
僕はまた、ぽよちゃんと走る。城内のオークたちはだいたい逃げだしただろうか? 火はもうすっかり消えてるし、あれ? さっきから、たまりんにぜんぜん会ってないな。なにげに強いし、心配してなかったけど、大丈夫なのかな?
「おーい。たまりん。どこ? たまりーん」
呼びかけるけど、返事はなし。そういえば、たまりんって体をゆらゆらさせることしかできないから、声が出ないんだよね……。
すると、前方の階段で、思いっきりユラユラしてる火の玉を見つけた!
「ギャー! 火のた……たまりんか」
「ゆらり!」
たまりんがクルクルしながら、階段の上をほうを示してる?
「こっちに行けって?」
「ゆらり!」
あがっていくと……あっ、いた! 踊り場で、逃げおくれたブタさんたちを食ってる。
デッカイ生首だ。
もちろん、ゴドバの。
でも、コイツ、バカなんだろうか? ブタさんたちを次々と丸飲みにしてるんだけど、首しかないからさ。ゴクンと飲みこむと、首の切断面からスポンと出てくる。
「ウギャー! 食べられるー! ぶ……ブヒ?」
「…………今のうちに逃げてください」
「ブヒヒ。すまんね。人間さん」
「いや、もう。なんていうか……」
まあ、実害がなくてよかった。
僕が剣をぬいて向かっていくと、生首はこっちをふりかえった。ガーッと口をあけて、とびかかってくるのか?
違った。首のつけねから、変なものが生えてる。羽だ。ゴドバの背中にあったのと同じコウモリの羽。それをひろげて、首は飛びさっていった。穴のあいた屋根から飛んでいく。
「ああー! 逃げたー!」
でも、あの方向は本体のある裏庭のほうだ。僕は急いで階段をかけおりる。
今のゴドバの生首が僕を見たときの目つきが、なんかイヤだった。あれは何か企んでるんじゃないかな?
ゴドバの知性は古代の魔法のせいで衰えてるはずだけど、悪知恵だけは残ってるのかも。
「ぽよちゃん、たまりん、急ぐよ!」
「キュイ!」
「ゆらり!」
三村くんやアジ、トーマスとも合流して、僕らは一丸となって裏庭へ急いだ。
僕らがかけつけたときには、すでに
それ
が始まっていた。飛んできた首が本体の胴体の上に合体している。ロープで縛っていた手足も、モゾモゾと胴体に近づいていく。
「わあーッ! 合体しちゃうー!」
あわてて止めようとしたら、素手攻撃したことになってしまったらしい。
チャララララ〜ンと戦闘勝利の曲がかかって、右足は灰になった。
「わあー! 灰だ。灰ー! ミャーコお願い!」
「ミャッ!」
「猛も吸って、早く早く! アジやシャケもー!」
みんなで吸ったんだけど、まにあわなかった。急すぎてオロオロしてたからね。またまた半分くらい灰が残って、右足は前より大きくなって復活した。復活すると、数値がリセットされて、また力があがる。
「つまみ食いー!」
猛がエアパクパクしたけど、右足はふりきって胴体に合体した。
「かーくん。ダメだ。兄ちゃん、力がもうマックスだ。これ以上、つまみ食いできないぞ!」
「やっぱりできないんだ?」
「できないな!」
つまり、数値がマックスになると、それ以上の数値は余剰ぶんとして残ってしまうらしい。右足は猛が
食べ残した
力で本体まで移動してしまったのだ。ああっ、左足がロープからぬけだして合体した。右手、左手も……。
全身がつながってしまった。
あわてて僕らが切断しようとする前に、その体がグングン巨大化する。
な、なんでだ? さっきより何倍も大きいんだけど……?