第90話 ふつうに四天王
文字数 1,372文字
「猛。なんなのこの数値? いくらなんでも強すぎでしょ? あっ、この二重カッコ。さては、つまみ食いしたな?」
「ははは。したよ。いっぱいした」
「どんだけ食い意地はってんだよぉー」
「うらやましいだろ〜」
「うらやましい〜」
ハッ! なんか、なごんでた?
恐ろしや。わが兄。
完全にお
にしてもさ。このステータス。敵として出てきたら、ふつうに四天王だから。
ヤダからね。兄ちゃんと『裏切りのユダ戦』とか書くの。
「じゃさ、猛。下に行こっか」
「よし」
「あっ、でも、兄ちゃん。その黒服なんとかなんないの? いかにも魔王軍じゃん。子どもたちが怖がるよ」
「そっか?」
「せめてマントは外して」
「うーん。兄ちゃん、こっちの世界では貧乏なんだよな。魔王軍に入ってるせいか、モンスター倒しても金もらえないんだ」
「そうなんだ」
ふひひ。勝った。人生で初めて兄に勝った。
僕はミャーコポシェットから百億円金貨を一枚とりだす。
最初のころは十万だか百万円だかの金貨が最高額だって聞いてたのに、あとになればなるほど高額の金貨が出現するようになった。たぶん、そのうちには一兆円金貨なんてのも出てくるんじゃないだろうか。
百億円金貨は直径十センチで厚みが二センチ近くもある。その上、円の周囲をぐるっと大粒のダイヤモンドが飾ってて、中心に現実では見たことないようなキレイな宝石が
このままペンダントやブローチにしてもいいと思う。純粋なコインというより、宝飾品あつかいなんだろう。
「これ、なーんだ?」
「おおッ、かーくん。なんだ、それ。兄ちゃん、そんなの初めて見るぞ」
「欲しい?」
「欲しい」
「へへへ。百億円だよ?」
「くれくれ。兄ちゃんにめぐんでくれ」
「へへへ。これから、かーくんさまって呼んでね。はい」
「ははぁ。かーくんさま」
ふふふ。気持ちいいなぁ。
僕は猛に百億円めぐんでやった。さらに、ミャーコポシェットから予備の防具をとりだす。
「オリハルコンのよろいがあまってるから、あげる。ゴツイけど、猛なら似合うと思う。あと、ミスリルのかぶとと盾ね」
「おお、サンキュー」
とりあえず、いかにも不審者のカッコだけはやめさせることができた。見ため、完全に戦士だ。背が高いせいか、猛が着るとオリハルコンのよろいでもスマートに見える。
悔しい。僕はチンドン屋だったのに……。
チャララッチャ。
タケルが仲間になった。
び、ビックリした。
テロップ、どこから見てるんだろうなぁ。
まあいいや。これで人語をしゃべる仲間が増えた。
四天王を買収して配下につけたかーくん。ウヒヒっ。笑いが変になる。
これで戦いはらくになるはず。
僕らは急いで、下の階層へ続く暗い階段をおりていく。
「ん? ここは?」
「船倉だな。船底だよ」
猛の言うとおりだ。
ずいぶん広い。前後の部分だけ壁でしきられてるみたいだけど、まんなかは数十メートルの一室。ところどころ柱がある。
だけど、照らされてるのは天井に近い一部だけだ。ポツリ、ポツリと等間隔に薄暗いカンテラがかけられている。
床に近いあたりは完全な暗闇。まったく見えない。
その闇のなかに、赤い目が無数に光っていた。
何かがいる!
チャラララッ。
ミニゴーレム(遠隔操作中)A〜Zが現れた!
さらわれた子どもA〜Zが現れた!
いきなり戦闘かッ。