第173話 蘭さん、襲撃される!

文字数 1,511文字



 さ、お姫様も無事に王宮に帰ったことだし、蘭さんたちの試合観戦だ。

 ところが、会場まで行ってみても、試合はやってなかった。もう終わっちゃったんだろうか?

 バックゲート付近を見ると、蘭さんたちの姿が見える。
 どうしたのかな? 時間にまにあわなかったのか?

 すると観客席で話す人たちの声が聞こえてきた。

「前にゴールディパーティーがやられてたよな」
「ああ、まったく。どこのどいつだ。闇討ちなんて卑怯なマネを」
「ちぇっ。今日の対戦、楽しみにしてたのに」
「だよなぁ」

 むぅ。どうやら試合は中止になったようだ。しかも闇討ちって言ってるから、蘭さんたちか、ゴライパーティーのメンバーが襲われたせいらしい。

「猛。大変だよ」
「ああ。そうみたいだな」

 ちょうどそのとき、蘭さんたちがゲートに近づいてきた。

「ロラン。どうかしたの? 試合が中止になったみたいだけど」

 蘭さんは無念げな顔つきでうなずく。
「さっき、かーくんたちと別れたあと、襲われて……足首をひねってしまったから棄権したんです」
「そうなんだ」

 ああ、闇討ちにあったの、蘭さんだったか。一人にしちゃいけなかった。ちゃんと会場のなかまで送るべきだった。

「ケガは大丈夫なの?」
「たいしたことはありません。さっき魔法で治してもらったので、明日までには完治します」
「よかった」

 でも、ゆるせないなぁ。闇討ちで選手を出場させないようにするなんて。
 これで残るは、僕らとゴライパーティーだけだ。闇討ちしてるのは、ゴライたちに違いない。

 だけど、蘭さんは妙なことを言う。

「でも、なんだろうな。あのとき、闇討ちって言うよりは、僕のことをどこかへさらっていこうとしてたような気が……急にうしろから口をふさがれて、押さえつけられて。とっさに相手のみぞおちに肘鉄くらわせてやったから、なんとか逃げだせたけど」

 五万攻撃力の肘鉄……。
 たぶん、闇討ちのつもりが、相手のほうが大打撃なんじゃ?

 それにしても納得いかないなぁ。拉致? またセイラ姫と勘違いされたんだろうか?

「そっか。残念だったね。せっかく帰ってきたのに、試合に出られなくなって」
「それはまあ、いいんです。優勝したい気はあったけど、また来年にも挑戦はできるし。それに、明日は僕ら、ビーツパーティーと三位決定戦をするんです。だから、きっと表彰式には出られますよ」

 蘭さん、強気だなぁ。

「じゃあ、僕、今日はしっかり休みます。これで」

 蘭さんはアンドーくんやモンスターたちと去っていった。推薦枠だけが泊まれるっていう高級ホテルに帰るんだろうな。

 日が暮れてきた。
 赤い空に金色やオレンジの雲が浮かんで、なんとも美しい。明日も晴れそうだ。

 こうして見ると、なんにも不吉なことなんてなさそうなんだけどね。
 でも、栄光を予感させるようなその空の下で、人間ドラマはひっそりと、こっそりと、そしてドロドロに進んでいたのだった。なんてね。

「かーくん。ギルド行こう。夕飯前にちょっとだけ特訓行こうぜ」
「猛、特訓好きだねぇ」
「兄ちゃん、明日の試合までに重騎士になっときたいんだよ。あの鉄壁ってやつ、一人でパーティー全員を守れるすぐれものだからな」
「僕は踊り子!」
「ああ、おれも大賢者になりたいよ」
「ゆらり〜」

 僕らはギルドに走った。
 転職して、またまた、いつもの白虎の森へかけこむ。
 ぽよちゃんには木竜、白ネコりんのトイに市松人形をおぼえてもらう。市松人形はあとで、ぽよちゃんにもなってもらおう。最後の一個はもったいないから、とっといて。

 おかげで、僕は念願の勇者になれた!
 やっと僕も勇者だー!

 ヽ(′▽︎`*)乂(*′▽︎`)ノ
 もう踊り狂っちゃうもんね〜
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