第96話 街なかで出会った美女。女神級美女!

文字数 1,757文字



 さて、僕は港町の外をめざして、ブラブラと歩いていく。

 だいぶ出入口に近づいてきたのかな? 言っても、そんなに広い街じゃないしな。

 松とか紅葉とか桜とか、見なれた樹木がポコポコ生えて、そのくせ砂地。ハマユウとかヒルガオ、月見草なんかも咲いてる。季節感があいまいだなぁ。とりあえずキレイなものがなんでも配置されてるみたい。

 ん? なんだろう。
 街外れにカゴが置いてある。
 カゴといっても、カゴバックとか、ザルとかのサイズじゃない。人間が前後をかついで、なかにえらい人を乗せていく、大昔のタクシー的なやつだ。時代劇で将軍とかご隠居さまが乗ってるやつ。

 今しも、そのなかに一人の女の人が乗せられている。大柄な男にカゴのなかへ入れられてるんだけど、本人は寝てしまってるのか?

 それにしても、も、ものすごい美女だー!
 蘭さん? いや、ちょっと違うな。スズラン? んー、それともちょっと違うな。似てるけど、なんか違う。もっとこう、お色気全開な美少女。

 それに着てる服が着物だ。金糸銀糸のぬいとりのある、豪華絢爛(ごうかけんらん)な真紅の振袖。成人式にしても派手すぎる。あんなのはテレビドラマの大奥でお姫様しか着ないやつだ。

 僕がボーっと見てるうちに、男たちはカゴをかついで行ってしまった。
 ああ、もう二度と会えないのかな。あの美女。キレイだっなぁ。いや、ここは漢字で綺麗って書いとかないと。それくらいビューティフルだった。

 男たちは街の外へ出ていった。僕もそっちの方向に用があるんで、あとを追っていく。いや、ストーカーとかじゃないよ? あんまり美人で気になったとかじゃ……。

 街の外は松の木林だ。防風林かもしれない。カゴは街道をそれて林のなかへ消えていく。
 ああ、さらば。美しい人……。
 ほんとに女の子と縁のないこの物語。
 せめてさ、リベッカさんだけでもいっしょに旅をしてくれないと、男性読者がついてこないよね。

 さて、街の外に出たんで、旅人の帽子をかかげてみる。けど、やっぱりダメだね。前の拠点が表示されるけど、あいかわらず、色が薄い。
 さらには、


 ここでは魔法が使えない!


 テロップに注意されてしまった。そうか。しょうがないな。

 僕はとりあえず、街なかで屋台のウマウマなものたちを買いこんで、船まで帰った。なんなら屋台ごとつれていって、ソバやラーメンや焼き鳥を子どもたち全員にごちそうした。

 港で屋台パーティーをしながら、僕は猛と相談する。

「やっぱり、まだ魔法では移動できないよ。だけど、このさき、子ども三百人つれて旅するのは危険すぎるね。僕、蘭さんたちと連絡とれないか試してみる。預かりボックスで手紙のやりとりができるかもしれない」

 というわけで、さっそく僕らの現状を書いた手紙を預かりボックスに入れる。すると、ほとんど数秒とたたないうちに僕の手紙が消えた。向こうでは待ちかまえていたらしい。

 預かりボックスのドアをあけっぱなしにして待ってると、白い手が手紙を入れるとこさえ見えた。今のは蘭さんかなぁ。

『かーくん。待ってました。今、ゲンカンって街にいるんですね? 近衛隊の船がすぐにそっちへ向かいます。
 ところで、僕たちは今、武闘大会に参加するために、ヒノクニの王都ヤマトへ移動している最中です。なので、ヤマトで落ちあいましょう。
 こっちは港にいた子どもたちも全員、親元へ返したし、問題ありません。アンドーやトーマスたちといっしょです。ヤマトで再会できる日を心待ちにしています。
 ロラン』

 それから三十分くらいして、スマートな帆船が漁港にやってきた。華美ではないけど、よく走りそうな船。見ためもキレイ。
 船長はクルウだった。そうだった。クルウは自分の船を持ってるんだったね。

「この船を曳航(えいこう)してエレキテルまで帰ります。子どもたちは私が責任を持って各家庭に帰しますので、ご安心を」
「よろしくね。みんな、バイバーイ」
「お兄ちゃーん。ありがとう」
「バイバーイ」
「クッキー美味しかったー」
「ママに会えるぅ」
「海、楽しかったよ」
「またね〜」

 甲板で手をふる子どもたちに手をふりかえす。
 ようやくゴドバのエレキテル占領作戦を、僕らは完全に打ちくだいたのだった。
 けど、このときすでに、別の陰謀にかかわってたんだけどね……。



 第二部『エレキテル攻防戦』完
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