ワタシの家族 ⑥

文字数 1,297文字

ワタシは結構大きくなるまで、指しゃぶりがやめられなかったし、おねしょも酷かった。
今思えば、絶対に心の病気だとわかるが、ウチの両親はなんとも思ってなかったようだ。
おねしょをしたり指をしゃぶる自分が、ダメで恥ずかしい人間だと思っていた。
この時点で小学生時代から、ワタシは十分ぶっ壊れていたと思う。
ただ精神を病まなかったのだけは救いだと言える。
ワタシが中学一年の頃、親友だと思っていた友達からいじめを受けたことで、ワタシは不登校になった。
この時、ワタシは両親の対応に感謝している。母は初めてワタシのいじめという問題を理解してくれたという気がする。
とはいえ、何かが解決されたわけでもない。
両親は相変わらず殴るし蹴った。
さらに我が家の問題を深刻にしたのは、妹の拒食症だった。
妹は、ワタシのようにいじめられて不登校という様なこともなく、小中高と進んだ。
いや、小学生のころ「先生が怖い」と言って学校を嫌がった時期があった。
両親は特になんの対処もしなかった気がするが、そんなことはいつものことだった。
勉強は苦手だけど、絵が上手いのでそれだけで高校の美術科に入学できるくらいの実力が妹にはあった。
当時の倍率は5倍ほどだったので、相当凄い。
そんな順調に見えた妹が、高校生になって拒食症を患ったことが両親はひどくショックだったようだ。
食事を取らなくなり、日に日に骨と皮になっていく妹を見て、ようやく両親は自分達の子育てが完全に間違っていたということに気づいたのだ。
遅すぎると思う。
もっと妹やワタシに注意を払っていれば、こういう問題は防げただろうし、どんな理由であれ殴ったり蹴ったりしなければ、こうならなかったと思う。
以前書いたが、拒食症は母親との関係性に関わる病気だ。
16歳の妹がそうなったのは、我が家の家族としての機能が正常でなかったからだとワタシは思っている。
拒食症を経験もしくは、家族にそういう人がいる方ならわかると思うが、拒食症の人は顔だけがぱんぱんになる。
リンパ液が漏れて顔が浮腫むんだそうだ。
顔ははち切れそうなほどぱんぱんなのに、体は骨と皮だ。
見た目は美しいとは言い難いのに、それをすっ飛ばして妹はとにかく体重を増やすことを嫌った。
病院へ行くと即刻入院と診断された妹の体重は入院時34キロだった。
34キロはだいたい10歳児の体重だそうだ。
自力で歩くと心臓に負担が掛かるから、車椅子に乗りなさいと、医者から言われていたが、妹は車椅子を拒否していた。
鬱病も併発したので、とにかくあまり口もきかないし、一日中ベッドの横に立っていた。
母やワタシが見舞いに行くと、病院内を自由に行き来できるので、売店に行き、そこで販売されている菓子パンを小一時間眺める。
妹によると、本当は食べたいんだそうだ。
だが食べられない。
妹が入院してから母は仕事終わり毎日毎日病院へ見舞いに行った。
土日もだ。
病院は都島区にあって、ウチからは車で40分くらいかかった。
それでも毎日通っていた。
ここからなんとなく家族の関係は変わった。
両親はあまり怒らなくなった。
というか怒れなくなった。
手を出すことも無くなったし、怒鳴り散らかすことも無くなった。
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