絶対に帰って来る男

文字数 503文字

ウチの父はなんでも根性でどうにかなる。と思ってる人だった。
良いか悪いかは別にして、アホだとは思う。
父は厄年になると、嘘みたいに病気か大怪我をした。
そういうスピリチュアル的なモノを一切信じてない根性の男だったのに。
胃に穴が開いて血を大量に口から吐き出したり、三メートル近い高さから飛び落りて脚を骨折したり、今度は足を滑らせて落っこちて踵を複雑骨折したり、誤って全身に硝酸を被って大火傷したり。
大体仕事中にそういう事が起こるのだが、なぜか父は病院に直行せず、根性で自宅に「ただいま」と帰って来るのだ。
大火傷して帰って来た日は、さすがのワタシら家族でも「いや、死ぬで!」と突っ込んだ。
だから、父はいつも、何があっても絶対帰って来るものだと思っていたのだが、ついに帰って来なかった。
仕事中に珍しく病院に行き意識を失って、緊急手術、ICUに一月入院した後、病院で息を引き取った。
さすがに遠く離れた他県から、帰って来れるだけの根性はなかったらしい。
51歳の時だ。
ワタシは見てないけど、父が逝って間もなく、母も妹も「ただいま」と玄関を開けて父が帰って来る夢をみたらしい。
きっと帰って来たかっただろう。
もうすぐ父の命日だ。
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