こうなったらそれしかないという気がする。

文字数 897文字

百円ちょっとで食べられるお寿司というのは、性善説と、それに基づく企業理念と、そうして企業努力の基に成り立っているのです。
ということを、大概の人は理解しているし、99%の人はフツーに食事を楽しみに行ってるはずだけど、一人でも二人でも三人でも、醤油ぺろぺろしちゃったら、そういうことが出来てしまう危険な店になってしまって、働いてる人たちの努力というのは一瞬にして水の泡になってしまうのです。
カウンターのあるお寿司屋さんへ行ける人は行けばいいさ。
ワタシなんて、カウンターのあるお寿司屋さんに行ったの、小学校の低学年が最後だよ?
もう何十年も、回転寿司しか行ってない。
そう、あれは「えべっさん」の帰りのことだ。
カウンターの向こうには寿司ネタが書かれた、木札がぶら下がっていた。
あれは、なんと読むのだろう?
概ね美味しい魚介の札には、漢字二文字でこう書かれていた。
時 価
ワタシはその言葉の意味も知らずに、欲望の赴くまま、アワビやウニやイクラや車海老を頼みまくったのだ。
ワタシが寿司を一貫口に入れるたび、あれが食べたい。と告げるたび、父の顔は青ざめていった。
父はそれがトラウマとなり、二度と、ワタシを寿司屋には連れて行くまい。と心に誓った。
なんとか財布の中のお金で賄えたということで、めでたしめでたしだよ。
自分が父の立場であったらと思うと、ゾッとしかしない。
子供って、ほんと残酷ですよねぇ。
父と違って、甲斐性のない庶民オブ庶民のワタシが姪っ子や甥っ子に奢ってやれる唯一の寿司が回転寿司で、その安全性がこうして脅かされ、生存の危機(わからんけど)に晒されている。というのはとにかく残念だ。
ゆうて、動画で拡散されてないだけで、百倍くらい、ぺろぺろしてる人間がいるのかもしれない。
とか考え出したら、外食することに対するハードルがあがるではないか。
せっかく盛り上がり掛けてたっていうのに。
安くて美味しいものが食べられなくなってもいいのだろうか?
薄利多売が招いたこの二、三十年の不景気とは言え、ワタシは美味しいものを食べたい。
ということで、みんながカウンターのあるお寿司屋さんに行けるように、賃上げするっきゃないですね。
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