ワタシの家族 ③

文字数 1,247文字

小さい頃、ワタシ達家族は、祖父の家の二階に住んでいた。
近くにいたが、祖父は寡黙な人だったし、必要以上に孫に構うような人でもなかったので、祖父との思い出は多くない。
だが、ワタシはもしかすると、祖父を拠り所にしていたのかも知れない。
ウジウジと自信のない子供だったので、近所の子らからよくいじめられた。
うちの両親はいじめられて帰って来るワタシを「かわいそうに」というより先に「やりかえしてこい!!」と怒鳴る人たちだった。
なにも寄り添ってくれなかった。
強くなって欲しい。という気持ちだったのかとも思うが、そうやって強くなれる人となれない人の二種類が世の中にはいるのだ。
ワタシは後者だったが、両親はほんとに1ミリだってそのことに気づかなかった。
ワタシは「かわいそうに」と言って欲しかったのだが、二人そろって「泣くな!!やり返してこい!!!」だ。
わかってもらえないのは辛い。
祖父は「かわいそうに」とも「やり返せ」とも言わなかったが、何も言わないことがワタシにとっての安らぎだったのかもと思う。
祖父が交差点で轢き逃げにあい、亡くなってから間も無く、ワタシは多分精神を病んだ。
多分っていうのは病院には行ってないからわからない。

菜の花畑で祖父がワタシに笑いかけている。

そんな夢を、起きている間も見ていた。
寝ても起きても祖父のことばかりだった。
お陰でちょっとおかしくなったワタシは、保育園から登園を拒否された。
急に奇声を発したり、みんなと口を聞かなくなったり、突然、教室の外に飛び出したり、相当ヤバい子供だったと思う。
当時ワタシが通っていた保育園には、紙芝居を保管するための半畳ほどの部屋があり、おかしな行動をとり先生を困らせるワタシは、その頃よくそこに閉じ込められた。
ずっと右手の中指を机や椅子の角にぶつけるという異常な行動もとった。
痛いのだ。
めちゃくちゃ痛いのだが、やめたくなかった。
お陰で大きなタコができて、それはいまだにあとが残っているほどだ。
あまりに大きなタコだったので、気づいた父(酒を飲んでいない時は死ぬほどまともな人間なのだ)が病院に連れていってくれた。
休むことを伝えると、先生が「しばらくお家で様子を見てあげてください」と言ったと母が言っていた。
どんだけ鈍感な親だったのか。
うちの両親は常に働き詰めだったので、子供の頭がおかしくなっていっても、気づけなかったのかも知れない。
その当時の妹との思い出はあまりない。
妹はすこし変わった子だった。
一人でウロウロするし、ワタシがいじめられて泣いて帰ると、アホやーとヘラヘラ笑うこともあったが逆に「私がいったろか!!」ということもあった。
仲のいい姉妹だったとは思うが、ワタシは妹が一体何を考えているのか、全然わからなかった。
だけどワタシは妹が好きだった。
すごくひょうきんで、面白くて、バカで大好きだった。
あの子はあの子で幼いながらに色々考えていたんだと思う。
ただそういう事は言わなかったし、ワタシを見て育っているので少し要領の良いところがあった様に思う。


続く
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