ワタシの家族 ①

文字数 984文字

ワタシは自分の親が酷いと思ったことはなかった。
というか、みんなこんなもんだと思っていた。
割と大きくなるまで、本気でそう思っていた。
うちの親は平気で打った。
打ったというと、軽い感じがするので「殴った」と書けばいいかも知れない。
とにかく手も足も出た。
父は真面目で一生懸命働く人だったが、ちょっと酒乱気味だった。
ワタシが覚えている最初の方の記憶で印象深いのは、母がピンクの絨毯の上で、乱れた髪の毛を直しながら泣いているところだ。
床には割れた食器と炊飯器が転がっていて、そこから飛び出したご飯が散らばっていた。
父はその向こうでぐーぐーいびきをかいて寝ていた。
ぞっとする。
以前、書いた小説に全く同じくだりがあるが、そこの部分はノンフィクションだ。
時々、実体験を混ぜている。
父の酒の飲み方は、ワタシが小さい時から異常だった。
気を失うまで飲む。
寝るじゃない。
気を失うのだ。
グラスに焼酎を八割、のこり二割が水という、狂気の沙汰の水割りを一気飲みする。
これを何回か繰り返す。
ワタシは自分がお酒を嗜む様になってから初めて、父の水割りが異常だと知った。
恐ろしいのは飲んでる時じゃない。
翌日だ。
二日酔いと抜け切らないアルコールのお陰で機嫌がめちゃくちゃ悪いのだ。
ちょっとしたことで、怒鳴る殴る蹴る。
何がきっかけになるのかがわからないので、ビクビクしながら生活しなければいけない。
地獄だ。
ワタシや妹がきゃっきゃ遊びだすと「うるさい!」と死ぬほど怒鳴られたし、母が何か口答え(言い方が嫌だが)をすれば殴られていた。
父は母が吹っ飛ぶくらい殴るのだ。
父が母を殴るのは、教育のつもりだったのかも知れない。
が、同級生に聞いても、こんなに手や足を出された人はいないので、この教育は異常だったと思う。
というか異常だ。
完全に。
そもそも力で勝てない女に手を出すなんて、ほんとに最低だ。
高校生のころ母に「離婚したら?」と言ったことがあるくらいに、酔っ払ったら最低人間だった。
飲んでないと、真面目だしいい人間だったけど。
ただのデーブイだ。
父だけならまだしも、母も負けじとヒステリックな人だった。
今思えば、ワタシも妹も逃げ場がなかった気がする。
怒りだしたら、両方から怒鳴られ、打たれるのだ。
親戚関係も希薄で、祖父母とも疎遠。
妹とワタシが今も仲がいいのは、二人でやり場のない辛さを分かち合っていたからかも知れない。

続く。
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