ACT97

文字数 777文字

ハッキングを得意とする別の仕事仲間がいて、そこからの情報だ。

御幸からの依頼で、他の業者を念のために本間か阪本名義で借りた形跡が無いか確認してあった。

さっきまで本間名義で江尻が使用していた車に、この後に本間も江尻も予約は入ってないことも確認済みだ。

翌朝からの、同じカーシェアの会社の車は、今日返却した駐車場とは反対方向だが、本間の部屋からは同じくらい離れている場所に借りてあった。

それにはすでに、あの場所を探し出せたから警察が張り込んでいるに違いないと御幸は思っている。

ただし、なぜかそれは小一時間程度の短い時間のみの利用。
御幸が思い描く江尻の行動を考えると、そんな短い時間では到底収まらない。

「面白い方法で、もう一台車が借りられているよ。」
そう言って追加の情報も送られてきた。

もう一台借りられている。
御幸は思わずニヤリとした。

株式会社カブト名の法人契約枠が見つかり、住所が本間の居住地になっていて、
「これじゃ警察はまだ見つけていないんじゃないかな。」
と、得意げに御幸に報告が上がってきたのだ。

調べてもらうと、主たる連絡先として本間の名前になっている。

数日前に手続きがされていて、その日は警察が江尻に最初にコンタクトを取ったその日だった。

免許証さえあって、業者としては使用した分の料金さえ払ってくれれば、車さえきれいな形で戻ってくれさえすれば、そこが本当に会社かどうかなんて、カーシェアの会社側にはどうでもいいことなのである。

「これ、どこかもう、もちろんわかっているよね。」
そう問い合わせると、すぐに
「今送ろうと思ってたところ。」
と、リンク先とともに送られてきた。

明日の朝のやつが動く。

全部教えると、つまらないからヒントとしてその一言だけをメールした。

きっと彼の想像力で、この情報までたどり着くだろう。
時計を見ると、あと小一時間で今日が終わろうとしていた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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