ACT99

文字数 722文字

「1時間で、結城なら何ができる?」
電話を切ったタイミングで質問された。

浅霧はスマホを見ていたようでで、ポケットにしまうところだった。

どうやら、まだ本間の1時間が納得行かないらしい。

「何なんですかね、買い物ですか?」
冗談で言ったのだが、浅霧に思い切り冷たい目で見られてしまった。

「まあ、何かし忘れたことをしますかね。」

「一人暮らしの成人男性が、今日一日中車を借りていたのにし忘れたことを想定して数日前からたった1時間だけ車を借りることってあるのかって聞いてるんだよ。」

と、少し機嫌の悪い口調で言い返された。ごもっともである。

その程度の事、急に借りるならともかく、今日済ませられるなら済ませる。ついでに。

「まあ、警察の目を背けるためとか・・・。」
冗談で言ってみる。

「結城、それだ。」

浅霧の指示に従って、本間と江尻の関連するワードを思いつく限りで調べるように島田に伝えた。

「おれはシャワー浴びて仮眠する、お前らも交代で準備しておけ。明日はきっと早い。5時位までには戻ってくる。」

そう言って、浅霧は帰ってしまった。
今晩は動かない、なんだかそう知っているようだった。

一応、そのとおりに島田に伝える。とりあえず、女性の三井には明日、5時までに戻ってくるなら一旦帰っていいよ、と男気を見せた。

大丈夫ですと言い張っていたが、
「僕と島田が車の中で寝られるように」
と頼むと承知しましたと帰っていった。

女子用の仮眠室もあるが、この前Gが出たと別の課の女性陣が嘆いていたのを知っている。

結城も島田も本当は帰りたかったが、とりあえず交代でサイバー課からの報告を待ちつつ仮眠を取ることにした。

明日、全て解決してくれることを願い、やっと見つけたスペースを陣取り眠りについた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み