ACT51

文字数 589文字

そんな事を考えていた数時間後、浅霧の読み通りに事態が動いた。

今日から始めた張り込みで流石に浅霧もまさかここまで直ぐに結果が出るとは思ってもなかった。

結城と島田の役回りを次に交代させようと思っていた矢先に、歩行気配を感じた。

この階段に向かってくる足音。

ナースサンダルでもなく、歩行訓練者が多く履いている滑り止めが効いた運動靴でも無い足音。

隙間から覗くとスーツ姿のメガネの男が、イライラしながら降りていくところだった。

メガネを掛けているが江尻だ!と思った。
気付かれ無いように後を追う。

後ろを追う歩き方、同じ歩き方の人間なんていない。
ほんの少し、肩を揺らして歩く姿はこの前見た江尻そのものだった。

段取りは既に伝えてある。

自分から連絡があったら、江尻のことは考えずに奥さんにさとられないようにさり気なく見舞いに来たと告げる。

もし、奥さんがいなかったら、すぐ折り返す。

もし、奥さんがいて二人とも無事なら、連絡が来るまで安全を確認しつつ、世間話で連絡が来るまで待機しておく。

島田は指示があるまで受付近くの待合所で待機。

三井が見舞いに入ったら、結城は指示が来るまで車の中で待機。
と言った内容の指示だ。

3人から「了承した」という返事が来たのは2時間ほど前だ。
そのシミュレーションが実際になり、行動が開始されたはずだ。

取り押さえるのがメインじゃないから、4人だけで動く。
さて、それぞれに任せよう。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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