ACT28

文字数 821文字

確かに、一般人が警察に何か聞かれるというだけでも敬遠されがちなところ、別の警察の人間に2度も訪問されたら︙記憶に残る。

「だから、遠ざかるように歩いたんですね。」
三井が感心する。

「そう、嫌な想いから遠ざかるのは、江尻も結城も同じだな。」
ちょっと大きい声だったので、班長がこっちをちらっと見た。

「で、一度、二度というのは︙。」
浅霧が三井の方を見る。

「結城さん、江尻は同じ時期に同じような感じで、森宮氏にも中西氏にも遭遇して、目撃されています。」
頷く。三井続ける。

「仕事だから、その行きたくない地域に行かざるを得なくても、何回も足を運んで遭遇しなかったのは、江尻は遭遇しないように心がけていたから。
でも、その月に限って、別人物とは言え2度も同じ目に遭っている。」

頷く。ん?

浅霧が口出ししないということは、そこは核心の一部だということだ。

「え?じゃあ、それ自作自演?何の意味があるんですか?」

「そんな事、本人じゃないからどういう意味かなんてわかるわけ無いだろ。
ただ、おかしい行動の裏には何かあるんだ。お前も言ったろ、会いたくないから入り口で気づくって。
みんな似たような服を着ているのに気づくのは、本能で気づくんだよ。
で、その度合が低ければ結構近くまで行っても気づかなくても、今会ったら嫌だと思うからこそアンテナにかかる。」

三井はいつの間にか、朝霧の魅力に惹かれているらしい。
この地位は渡したくないから、食らいついていたい。

「一人目だけなら、気分的にアンテナが低くなった際に偶然出くわして嫌な思いをした︙だけだろうが、そうなると次、同じ気分になりたくないから一気に自分のアンテナを今まで以上に張る。
万が一、結城の思うように遭遇したら逃げればいい。
自分だけ気づいたとしてもお互いに気づきあったとしても。
なのに、二人目のときも他人に見られる行動を起こしている。ここまですると、変。偶然で片付けるにはちょっといただけない。」

そう言われれば、変だと思えてくる。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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