Disclose58

文字数 709文字

「甫と仲がいいから、アレが一人暮らしを始めたって聞いた時、一緒に住めばいいのにっていったんですけどね。父さんが心配だからって。」

それなのに、いい迷惑ですよ。と少し本音をこぼした。

そこには今は触れずに、話をすすめる。

「娘さんが普段使っていた部屋はわかりました。できれば、このテーブルでの彼女の座る位置も教えていただけませんか。」

そういうと、ほんの少し身を乗り出して、指差す。
間取りからすると、部屋を背にして座っていることになる。

「甫氏と電話でやり取りしていたようなんですけど、ご存知でしたか?」

「まあ、アレの話し相手なんて、俺か甫くらいだからね。夜中に話してた時は、甫だろうと思うよ。」

「そうですか、娘さんご友人はいなかったんですか?」

学生の頃はいたと思うが、社会人になってからはいなかったと思う。と、健太郎氏は言った。

「沢田恭子さんともお話されないんですか?」

不意に出てきた個人名に、適当に話を流していた健太郎が怖い顔で浅霧の顔を見ている。

「恭子?」
「ええ、恭子さん。」

そう言って、何枚かの写真を並べる。

あの日、甫の取り調べの少し前にやってきた探偵は、警察が江尻甫と接触するずっと前から、別の理由で田村健太郎、結果親子についても調べて監視していたらしい。

その時の提出物の中にこの写真も含まれていた。

そこには健太郎と女性が並んで歩く姿や、どこかで食事をしているところを隠し撮った写真だった。

彼女と健太郎は同じくらいの年齢に見える。きっとこの部屋が整然としている理由は、彼女がマメに掃除などをしているからだ。

「もう、長いおつきあいなんですよね。この店、行きつけなんでしょ?」
と、浅霧は仲睦まじく食事している写真を指差した。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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