その63

文字数 686文字

乗り換えで有名な駅だから、そりゃあだれでも利用するのだろうが、なんかちょっとうれしいような複雑な気持ちでこの子もこの駅を利用しているんだ・・・と、思って目だけで見送る。

あっちは気づいてないがあの子は全てにおいて目立つので、見かけると気づかない人は居ないのではないかと思う。

相手先の駅に着くと目の前に交番があった。

結構この時間から忙しそうだ。

3人位の警察官の姿が見える。
そのうち一人は、女性だ。

ここの人たちも、この前僕に聞きに来た人たちも、こういう経験をしているのかな・・・とか、ふと思ってしまった。

あの尋問、もとい質問された日。

あの数時間、質問されている間はずっとイライラしてきてしまったけれど、後々考えれば彼らも仕事であるからと思えたら、帰りまでには少し怒りもおさまった。

とりあえず、取引先に向かう。

課長と「ここは突っ込まれるだろう」と思われたところが幾つかあったが、向こうの意見を入れて修正して再度持っていくという方向性で話をすすめようと言うことだったのに、なぜか今日持っていったものですんなり通ってしまった。

思ったよりも早い時間で終わって、結果早く職場へ帰れることになった。

会社に帰りたくなくて、行きはなるべく早足で歩いた道も、帰りは出きる限りゆっくり歩く。

ゆっくり帰ってきた駅前で、行く時に見えた交番が見えた。

さっきに比べて、少し空いているように見える。

その時、サボりたいということで色んな事が頭の中でリンクしたのかもしれない。

あの日、会議をサボりたくて警察を利用したら結果的に嫌な思いをしたけど、今回も警察をきっかけにサボる口実を見つけてしまったのだ。

その時だ。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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