その12

文字数 687文字

どういった お詫びを想定しているのかわからないけれど、帰り際、まだやっている洋品店やスーパーやコンビニに立ち寄ることもなく、過ぎ去っていく。

そして似たようなマンションが立ち並ぶ一角で降ろされて、その中の一つのマンションへと女性に手を引かれて入ることになった。

オートロックのない、誰でも自由に出入りできるエントランスを入る。

見たところ、入り口に防犯用のカメラさえ設置されていない。

割と古くからある小さなマンションのような、アパートのようなところだった。

郵便受け置き場件エントランスの前にあるエレベーターに乗って彼女性の部屋に誘(いざな)われた。
連れてこられた部屋は、キラキラとした女子っぽい部屋というようなきれさはないがそれなりに片付けられた1DKだった。

その奥にシャワーがあるからと言われて、彼女は僕にタオルだけ押し付け、脱衣所のあるスペースに押し込めた。

まさか、お詫びが身体・・・。
いや、それはいくらなんでも僕の考えすぎだ・・・と思いたい。

「脱いだものは、そのカゴの中に全部入れて置いてください。」
言われるがまま、もう、どうにでもなれとばかりにシャワーを浴びることにした。

頭からシャワーを浴びつつ、
(なんで、僕は頭にまでお湯掛けているんだ?)
と、自分の感情がついてきてない事を察し、落胆した。

「ええいままよ!」
とこうなったら、雨で身体も冷えたことだしと入念に身体を洗うことにした。

もしかしたら、もしかするかもしれないし・・。
と、男なら誰もが少しは考えてしまう事を悲しく妄想しながら。

一応、隅々まで・・・割と入念に。

そして、上がる寸前に
(あ、僕の下着・・・。)
と思い至った。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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