その94

文字数 443文字

そういえば、先日来たときに、少し枯れかかった花が飾られていたように思う。

多分、誰かが見舞いに来るたびに新しい花になっていくのだろう。

渡したとき、一瞬イヤな顔をされたように思ったが、きのせいだったよううだ。

部屋から漏れていた明かりは、中西につながっている機会の電気だけで、部屋の照明は一番薄暗いレベルで設定されているようだ。

低く小さなモーター音で、中西の存在すらかき消され見えない。
そこに横たわっているというのに。

明るくしようとも思ったが、そのままにしておいた。

ベッドで横たわるその男性は、酸素マスクで顔の大半が隠されているが土気色で、これだけでは生きているのか死んでいるのかわからないが、モニター上で異常が無いようだし、一般病棟にいるのだから容態は安定してはいるのだろう。

しばらく見ていても、ピクリともしない。
まるでこのままタダの物体に成り下がるだけかのようだ。

これを毎日見続けるのは、正直飽きるだろうな。と思うと、奥さんに同情してしまった。

ふと、僕がこの立場になったらと想像してみた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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