ACT89

文字数 622文字

そこで、本間の住むマンションで張り込んでいた捜査員と、駐車場へと向かった捜査員が挟み撃ちすべく駐車場からマンションへと向かうすべてのルートを使って捜査員を向かわせたが、本間はマンションには戻ってこなかった。

管理官を含む、指揮系統の連中は気づかれて逃げたという方向で捜査を勧めている。

見えている物証や知り得た行動を考えればそれが一番手っ取り早いが、色んな方向から見てきたからか、結城ですらあの考えは安直過ぎますよね、と浅霧に言ってきたくらいだ。

そのタイミングで消えるくらいなら、1km近く離れていたとは言え、自分の住処の近くでは借りないだろうと浅霧も考えていた。

気がかりなことに、江尻は木曜からずっと借りているらしく、未返却のままらしいが、その車が今どこに有るのかまではわからないと、ついさっき別の重要な話とともに御幸が電話で教えてきた。

「もうすぐそっちに通報させるから、よろしく頼むよ。」
と言って電話は切れた。

その通報らしい電話は例の比留田医師からだった。

浅霧を名指しでかけてきた。

まあ、そのへんは御幸の差し金なのだろうが。

その一報は、もちろん指揮を採っている管理官の耳にも入る。

滅多に自分があてがわれた席から動かないのに、今日はたった数歩だが、会議室内に設置された電話の近くまで歩み寄ってきた。

「浅霧さん、スピーカーでお願いしますよ。」
と嫌味たっぷりの視線を添えるのは忘れない。

そう言いながら、近くに椅子を引き寄せて、電話のすぐ近くに座った。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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