その27

文字数 613文字

まあ、 どうせ表示を見なくても課長か会社の電話番号にちがいないのだ。

「江尻さん、この方をご存知ですか?」
と、写真を出してみせた。

ちょっと顔が小さくてわからないので写真を預かった 。

2人写っている。三井はそのうちの一人を指差している。

あれ、何処かで見たこと・・・。

表情で何となく引っかかりが分かったと悟られたのか、
「もっとよく見てください。」
と、詰め寄られた。

若い女性に言い寄られて悪い気がしないので、ちょっと時間を掛けて見てみる。

あ・・・と、うっすらあの人だ・・・と気付きだしたのだが、こんな機会でもないと、焦(じ)らしてみたのだ。
まあ、せいぜい1分くらいだったが。

「あー、思い出しました。何処かで見たと思ったら、以前働いていたところの課長ですね。」
と、答えた。

その課長はたしか・・・中西。

「ええ。以前、江尻さんが働いてらっしゃった、サトウ商事の中西さんです。」
僕はその先を待つが、彼女は何も言わない。

どうやら、向こうからすると、僕が答えるターンのようなのだが、今の所呑気な僕は気づいていない。

すでに、僕が働いていたところを調べているということをあえて出してきたらしいことに。

少し噛み合わない時間が出来てしまった。

だから、僕は僕でしびれを切らせてしまって、きっと向こう側からすると、トンチンカンなことを発信する。

「そうそう、中西課長。中西課長が、どうかしましたか?」
顔は、よく知ってますね!というような表情だった多分している。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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