その118

文字数 552文字

カーシェアだってレンタカーの端くれだ。
この手のゴミは片付けなければならない。

次の人が気持ちよく使えるように。

たしかトランクに簡単な掃除用具が入っていた。
羽織るものに枯れ葉とかつくと嫌なので、先に掃除をしよう。

トランクを開け荷物を取り出す。
「よいしょ。」
思わず声が出た。

いちいち掛け声をつかないと行動できない父や母を一時期小馬鹿にしていたが、自分も少しずつそこに近づいているんだと、こういうことで気がつく。

たった一日のために、心配性の僕は色々と持ってきすぎたと思っている。

でも、これは今日イチ必要なものだ。

その荷物をとりあえず脇に置いて、清掃用具を取り出す。
粘着シートをコロコロとする。

さっき食べたもののカスとかも一緒に取れた。

ロールを何回か転がしては切ってを繰り返し、きれいな面にして元のケースに戻す。

ウエットシートも入っていたので、ついでに色々と拭く。

どうせまた触るのだが、ついでだ。
出たゴミは丸めてゴミ袋に放り込む。

ついでのついでに、消臭スプレーも振りまく。

帰りの運転を少しでも気分良くしたい。

一通りの作業が終わると一気に爽快な気分になった気がした。

気がつけばかなり暗闇が近づいていた。
もうすぐ、夜の時間だ。

さてこの場所から帰る前に、最後のひとときを楽しもう。

明日からまた退屈な日常が始まるのだから。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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