ACT27

文字数 598文字

「え?一度?二度?」

よく分からない。けど、どうやら浅霧が変に思っていることに三井が行き着いたらしい。

「この前、面白そうだから江尻の跡をついていったんだよね。そしたら、彼は受付の前を通りかかった時に、明らかに顔をそむけ、少し遠ざかるように歩いて通り過ぎたんだ。しかも、少し早足で。」

浅霧、その行程をやってみせる。

「そこには、受付の人が数人と警備員がいた。」

ホワイトボードにマグネットをつけ、黒のペンで四角に囲った中に、マグネットを3つ、外に一つ並べる。

もう一つのマグネットを見立てて、江尻が歩いた導線を見ると遠ざかるのが不自然な配置だった。

「君たち、普通ああいう会社に聞き込みに行けばさ、まず受付で聞くよね。」

「ええ、その日受付で確認を取ってもらいました。」

三井の説明によると、自分たちが受付に行き、不在ということで入り口付近で待っていると、北芝署の二人も受付で確認を取った。

その時点では、同じターゲットだと思わずそれぞれ近くで様子見をしていると、江尻が出てきて受付に来た。


受付の一人が奥の人出があまりいない方へと連れて行った行為を見ていたらしい北芝の二人が念の為ついていったらしい。

三井と島田は、きっかり時間まで待ち、改めて受付に行くとその方向を見たので、自分たちも向かったという。

「つまり、江尻からすると受付に印象が残る行為をしてしまい、バツが悪かったということだね。」
と浅霧が言う。

なるほど。

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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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