その70
文字数 411文字
お疲れの女性にはそれでも十分だったようだ。
「中西の妻です。」と、予想通りの答えが返ってきた。
主人がいつおお世話に…等々通り一遍の挨拶を済ませ、一応持参した花を渡す。
「お気遣いありがとうございます。」
と言って受け取ると、彼女は無造作に近くに置いた。
折角、きれいに束ねられた花が潰れてしまったことにちょっと不満を感じた。
しかし、彼女の気分を考えると、そこまで意識が回らないのは当然かと思い直し、視界の端では気にしながらも、部屋の中に視線を這わす。
窓の外は、駐車場などが見えないから、こちら側は病院の裏手なのだろう。
同じ病院の他の病棟も見えるし、若干の木々も見える。
どうぞ、と椅子を勧められたのだが、花も渡して用事も済んだので早々に適当に理由を告げ引き上げることにした。
潰されたままの花に後ろ髪引かれながらも。
意識がない人を見続けても仕方がないし、大体にして憔悴しきっている奥さん相手に話すような内容も持ち合わせていないからだ。
「中西の妻です。」と、予想通りの答えが返ってきた。
主人がいつおお世話に…等々通り一遍の挨拶を済ませ、一応持参した花を渡す。
「お気遣いありがとうございます。」
と言って受け取ると、彼女は無造作に近くに置いた。
折角、きれいに束ねられた花が潰れてしまったことにちょっと不満を感じた。
しかし、彼女の気分を考えると、そこまで意識が回らないのは当然かと思い直し、視界の端では気にしながらも、部屋の中に視線を這わす。
窓の外は、駐車場などが見えないから、こちら側は病院の裏手なのだろう。
同じ病院の他の病棟も見えるし、若干の木々も見える。
どうぞ、と椅子を勧められたのだが、花も渡して用事も済んだので早々に適当に理由を告げ引き上げることにした。
潰されたままの花に後ろ髪引かれながらも。
意識がない人を見続けても仕方がないし、大体にして憔悴しきっている奥さん相手に話すような内容も持ち合わせていないからだ。