こちらからみえるセカイ:ACT1
文字数 1,056文字
今日も 「とおり雨」でコーヒーを飲みながら、浅霧拓巳(あさきりたくみ)は憂鬱な雨を眺めていた。
あれからチョクチョクと、考えがまとまらない事を言い訳に外に出た際に、ここに足を伸ばしては、コーヒーを飲みに来るようになっていた。
ただ、雨の日にここに来るのは、久しぶりだった。
店が一段落したのか、店主の高橋圭(けい)が自分の分のコーヒーを持ってきて、浅霧の隣に座った。
おもむろに
「おばさん、どう?」
と聞いた。
おばさんというのは、高橋の母親の事で浅霧の母親の友人だった人だ。
学生の頃までは何回かあったことがあったが、元気な姿を見たのはそれが最後だったと思う。
浅霧の母親は少し前に鬼籍に入った。
高橋の母親は数年前から認知症を患っているらしく、友人関係だった母の葬式に来ても、認識出来ないだろうと連れても来なかった。
なので、葬式の後に入院している施設へとお見舞いに連れて行ってもらった。
久しぶりのおばさんは母よりひとつ年上だと言っていたが、見た目は母よりも随分と若く見えた。
でも、数分くらい話している間は全く認知症と気取られないような素振りを見せられ最初は拍子抜けした。
「あら~、どうも。お久しぶりね。」
そう言われたから、普通に「どうも」と返した。
「元気だった?」
そう言われたので「ええ、まあ。」と答える。
「ぞう、それは良かった。」
そう言われたので「おばさんも、お元気そうで・・・」ここまで言ったら、話を被された
「私は、こんなに元気なのに、息子が年寄り扱いして・・・。本当に嫌になっちゃうのよ。」
という。この辺から、少しおかしいと気づき出す。
「どうぞ、ごゆっくり。」
そういうと、歩いて行ってしまった。
でも、数歩歩いたその先で、ここの施設の人が声を掛けた。
俺たちを、「今、高橋さんはここにいますよ」と案内してくれた人。
つまり、毎日見ている職員さん。
その人に、俺に話したことと寸分たがわぬ言い回しを始めた。
だから、高橋の顔をつい見てしまった。
でも、苦笑いしている彼の顔を見てから向き合うと、彼女が全く僕を認識していないことに行き着いて、そして愕然とした。
よく知っている人が来ようと、知人程度の人が来ようと同じ事を言うらしい。
そして、悲しいかな俺の事はもう認識出来ないらしい。
ギリギリ高橋のことはわかるそうだが、それもだんだん怪しくなってきたそうだ。
自分たちが40代ということは、親はそれだけ年齡を重ねているので、色々とガタがきているのは仕方がない。
以前の事件の件で、おばさんに話を聞きたかったのだが、その時に諦めることにしたのだ。
あれからチョクチョクと、考えがまとまらない事を言い訳に外に出た際に、ここに足を伸ばしては、コーヒーを飲みに来るようになっていた。
ただ、雨の日にここに来るのは、久しぶりだった。
店が一段落したのか、店主の高橋圭(けい)が自分の分のコーヒーを持ってきて、浅霧の隣に座った。
おもむろに
「おばさん、どう?」
と聞いた。
おばさんというのは、高橋の母親の事で浅霧の母親の友人だった人だ。
学生の頃までは何回かあったことがあったが、元気な姿を見たのはそれが最後だったと思う。
浅霧の母親は少し前に鬼籍に入った。
高橋の母親は数年前から認知症を患っているらしく、友人関係だった母の葬式に来ても、認識出来ないだろうと連れても来なかった。
なので、葬式の後に入院している施設へとお見舞いに連れて行ってもらった。
久しぶりのおばさんは母よりひとつ年上だと言っていたが、見た目は母よりも随分と若く見えた。
でも、数分くらい話している間は全く認知症と気取られないような素振りを見せられ最初は拍子抜けした。
「あら~、どうも。お久しぶりね。」
そう言われたから、普通に「どうも」と返した。
「元気だった?」
そう言われたので「ええ、まあ。」と答える。
「ぞう、それは良かった。」
そう言われたので「おばさんも、お元気そうで・・・」ここまで言ったら、話を被された
「私は、こんなに元気なのに、息子が年寄り扱いして・・・。本当に嫌になっちゃうのよ。」
という。この辺から、少しおかしいと気づき出す。
「どうぞ、ごゆっくり。」
そういうと、歩いて行ってしまった。
でも、数歩歩いたその先で、ここの施設の人が声を掛けた。
俺たちを、「今、高橋さんはここにいますよ」と案内してくれた人。
つまり、毎日見ている職員さん。
その人に、俺に話したことと寸分たがわぬ言い回しを始めた。
だから、高橋の顔をつい見てしまった。
でも、苦笑いしている彼の顔を見てから向き合うと、彼女が全く僕を認識していないことに行き着いて、そして愕然とした。
よく知っている人が来ようと、知人程度の人が来ようと同じ事を言うらしい。
そして、悲しいかな俺の事はもう認識出来ないらしい。
ギリギリ高橋のことはわかるそうだが、それもだんだん怪しくなってきたそうだ。
自分たちが40代ということは、親はそれだけ年齡を重ねているので、色々とガタがきているのは仕方がない。
以前の事件の件で、おばさんに話を聞きたかったのだが、その時に諦めることにしたのだ。