ACT17

文字数 545文字

その前 に、とっとと今のを終わらせないと動くのに足かせになりそうだ。

本部に戻ると、まずは不機嫌な班長が、手ぐすね引いて待っている気配を感じたので、資料室の方へと向かい、結城には見つからないように、ここへというメールを送っておいた。

数分後、何とか班長の目を盗んで結城がやってきた。
言いたいことがたくさんあるが、言っても仕方がないことも承知しているから、手帳を取り出して、島田から聞いたというあらましを拾った範囲で教えてくれた。

「そう、どっちにも関わりが・・・。」

さっきの男・・・江尻甫の、あの4人から離れて見えなくなったであろうタイミングからの、湧き出るような喜びに似た感情がダダ漏れしてくるものを、必死に隠そうとするその手の人間たち特有の佇まい。

彼は少なくとも、知っていた。
結果はどうであれ、事実として。

「おもしろいねぇ。」

そういいながらも、目は怒っている。
結城はこういう目をする浅霧が、間違いなくさっきの事件に吸い寄せられていくんだろうと予感していた。

いや、あっちから近づいてくるのか・・・。

「じゃ、とりあえず、あっちに戻りますね。明日、例のは送検されるって行ってましたから、もうすぐこっちは終わりますので、浅霧さんは帰ったと言っておきます。」
と、一応伝えるだけ伝えて、結城は出ていった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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