その32
文字数 543文字
「江尻くん 、ちょっとこっちに。」
と言い放ち、そのまま隣の会議室へと消えた。
課長の一言で、みんなからの視線からは解放され僕以外の全員は、通常に戻っていく。
どうして、人の悪い噂はすぐに広まるのだろう。
きっと、通勤途中で僕が誰かに親切にしたところを職場の誰かが見たとしても、こんなに早くには伝わらないどころか、話題にすらならないと思う。
なのに警察に呼び出されたというだけのこと、(まだ、内容だって知らないくせに)そこまでの道すがら、哀れみに近い視線で見送られた。
課長が選んだ会議室は5~6人用の打ち合わせ部屋で、一応モニターと小さなカメラが置いてある。
遠方とのweb会議なんかで使用する、この職場で一番小さいが一番防音仕様のしっかりした部屋だった。
「まあ、そこに座れ。」
言われたままに座る。
僕の顔色がよくないからか、課長は一旦席を外してドアの向こうの誰かに
「わりぃ、なにか飲み物持ってきて。」
と言った。
その頼まれたと思われる人が飲み物を僕の前と、課長の前において出ていくまで、課長は一言も発せずにいる。
僕から目線を外さぬまま。
それは、伏し目がちな僕でもわかるくらいの圧で。
ただ、その圧は気づけても僕は、さっきのことに動揺しているから、誰が飲み物を持ってきてくれたのかまで見る余裕がなかった。
と言い放ち、そのまま隣の会議室へと消えた。
課長の一言で、みんなからの視線からは解放され僕以外の全員は、通常に戻っていく。
どうして、人の悪い噂はすぐに広まるのだろう。
きっと、通勤途中で僕が誰かに親切にしたところを職場の誰かが見たとしても、こんなに早くには伝わらないどころか、話題にすらならないと思う。
なのに警察に呼び出されたというだけのこと、(まだ、内容だって知らないくせに)そこまでの道すがら、哀れみに近い視線で見送られた。
課長が選んだ会議室は5~6人用の打ち合わせ部屋で、一応モニターと小さなカメラが置いてある。
遠方とのweb会議なんかで使用する、この職場で一番小さいが一番防音仕様のしっかりした部屋だった。
「まあ、そこに座れ。」
言われたままに座る。
僕の顔色がよくないからか、課長は一旦席を外してドアの向こうの誰かに
「わりぃ、なにか飲み物持ってきて。」
と言った。
その頼まれたと思われる人が飲み物を僕の前と、課長の前において出ていくまで、課長は一言も発せずにいる。
僕から目線を外さぬまま。
それは、伏し目がちな僕でもわかるくらいの圧で。
ただ、その圧は気づけても僕は、さっきのことに動揺しているから、誰が飲み物を持ってきてくれたのかまで見る余裕がなかった。