その35

文字数 762文字

なんせ 、元の会社・株式会社カブトの近くだから。

ただ、その地域はそこだけでも何万人と働く大きな駅のある地域だから、小さな田舎じゃないし会うなんてことは、本来なら何万分の1 のハズなのだ。

でも、もう一か所については偶然中西の受け持ちの会社が入っている同じビルに、僕の担当が入っていると知らずに僕はずっと通っていた。

だとしても、こちらも主要な駅が結構近くにあるエリアなので、たとえ同じビルに入っていたとしても、普通なら出会わないし、会ったとしても大人数の中のひとり、気づかない位の場所だった。

しかも僕は、割と嫌いな人に会いたくないタチだから伏し目がちに、周りを確認しながら歩く癖がある。

それが幸か不幸か、見つけてしまった。
彼らを。

どちらも、僕が先に気がついて気付かれないようにしていたのに、どちらも何の風の吹き回しなのか声を掛けてきた。

森宮は僕のパーソナリティスペースにヅカヅカと近づいてきては、コーヒー臭い息が届くくらいの距離で、肩に手を置きながら、また飲みに行こうと誘ってきた。

気分が悪くなり、強く突いたとは思わないけれど、押しのけて僕はその場を後にした。

三井刑事曰く、その行為がみんなが険悪な雰囲気に見えたと証言したシーンらしい。

中西課長の方は、近くのカフェまで連れて行かれ、他のお客さんもいるのに、もう少しネクタイの色味を変えたほうがいいとか、口角を上げて歩けとか猫背だとか、そんなことを終始言っていたが、途中で僕は耐えられなくなり殆ど何にも覚えていない。

僕がしたを向いたままでいるからか、最後に
「まあ、頑張れ。」
と言って、伝票を持っていこうとしたので、これ以上マウントを取られたくなくなり、
「僕が払います!」
と言って、伝票をもぎ取った。

で三井刑事曰く、その奪い取った感じが暴力的で皆が振り返るほどのシーンだったらしい。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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