ACT31

文字数 606文字

「片思いのあの子は、どうだい?」
待ちきれずに、浅霧が聞く。

「お前好みだからね、見てて楽しいし飽きないよ。」

「へぇ、そりゃあいい。君がそういうってことは、ゾクゾクする相手ってことだね。久しぶりに、楽しめそうだ。」

高橋が注文品を持ってきて、ごゆっくりと言って去っていった。

「最近、ゆっくり出来てる?」
「まあまあだね。」

一口メロンソーダを飲んで、
「たまにはいいな。」
とか言っている。

いいおっさんがこういう物を飲んでも、一昔前とは違って今は変な目で見られなくなった。

いい時代になったものだ。

そんなことに感心していると、すっとポケットから名刺サイズのカードを御幸は出してきた。

江尻のアリバイで話題に出ていた店の名前だった。

「そこ、行ってみたかったんだよね。」
「ここでも楽しい出会いが待ってるよ。楽しみにしていて。」

御幸の含み笑い。
しかも、ピースしている。

ここを徹底的に調べろとのことらしい。

そして、2人か2つか。
行って見てからの楽しみも提示された。

「あ、今日はお土産忘れちゃったんだよ。また今度、持ってくるよ。」

お土産は、ウイスキー。
彼の好きな酒の一つだ。

とにかく、こっちからは頼んだとしても、お金も受け取らない。

酒を受け取るのは、自分が飲むものじゃなく、御幸の仕事仲間への報酬代わりだ。

その仕事仲間が、ここの店のかつての店員を見張っている。

お金だけじゃなく、警察の人間から、情報が出されるとは思ってはいないのも楽でいい。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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