Disclose64

文字数 765文字

匿名のバイトとして雇われていて、公共の電車で飲み物をこぼすシーンを撮りたいからというのでレインコートを来て来るようになっていたそうで、数駅前からこの電車のこの車両、と指示があったらしい。

雨で若干遅れたがそれをサイト内でのチャット機能で送ったら、それに合わせて二人が乗って来たという。

どちらも時間に関して言えば絶妙で、かなり正確に動いている事がわかる。

「まあ、乗れなかった人はお気の毒ですね。でも、予約ですからね。ところで、珍しいんですか、甫氏が頼むのって。」

その質問に健太郎は何かまずいことを言ったかと警戒しながら、

「ええ、まあ一緒に住んでいたわけでもないですし、タクシーなんてそこら辺どこでも走ってますからね。最近じゃ、すぐ電話でチャチャッと呼べるでしょ。」

と言いながら、スマホの操作のようなことを手の仕草でやってみせた。

健太郎氏が提携していたタクシー会社から聞いたのだろう。未だに二つ折りの携帯を使っているらしく、彼が着ているポロシャツの胸ポケットに入っている。

「それなのに、あの日は甫から前日に予約されて。」

「そうですか、じゃ、この時もですか?」

そういうと、また数枚の写真を出してきた。いわゆる提灯と言われるルーフにあるライトが消えているタクシーに乗り込む、男性。

そして、その人が乗り込み去っていく際のタクシーの後ろ姿。

それから、防犯カメラからの映像に映るタクシー。路地から突き出てくるので、カメラからは正面で写し取られている。

「全部同じ日に撮られていましてね。これ、甫氏ですよね。そしてこのナンバー、あなたの所持するタクシーのナンバーですね。」

この写真は、例の探偵から提出された物を写真として出したもので、実際は映像だった。

それはデジタルデータとして撮った場所も日付も記録されている。

「これは、甫氏の逮捕前日の写真です。」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み