その29

文字数 551文字

「そうですか 。江尻さん。中西さんとご一緒にサトウ商事の近くのカフェで歓談されていますよね、5月の第2週くらいに。」
僕が思い描いていた、偶然会った日のことだ。

「ええ、歓談かどうかはさておき、僕が会ったと思う日ですね。急に声を掛けられて、僕は嫌だったんですが大人の対応・・・とでも申しましょうか、コーヒーでもどうだというので。」
そう、そこで働いていた時に時々寄った店。

テイクアウトもしたことがある僕の当時の貴重な場所。

「どんな事をお話されたんですか?」
「どんなって・・・。元気かとか、体調はどうとか・・・。」

「それで?」
「まあ、適当に話して別れましたよ。」

「適当ですか?」
「まあ、こっちはいい気分じゃなかったことはたしかですね。
で、何なんですか?中西課長から、なんかクレームでも?」
少し、語気が強くなってきたところで、島田が出てきた。

「クレームになるようなことでも?」
なんか、心の何処かで少しずつ疼く。

心が痛い。

「揉めてた、とか誰かから聞いたんですか?」
「揉めてた・・・、何か揉めるようなことでも?」
イライラする。

「ちょっと、なんなんですか?言いたい事あるなら言ってくださいよ。気分悪いな。」
「あなたは、そうやってすぐ怒るんですか?」
怒る?

そんな性格じゃない。

僕は、この二人の言い方にイライラしただけだ。

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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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