ACT72

文字数 582文字

管理官は、本間を第一容疑者として今後の方針を打ち立てて、江尻はその行方を知っている参考人という位置づけになったが、浅霧はその方針に納得していなかった。

変装して偽名まで使って病院に見舞いに訪れたという報告を三井からあげていたのだが、管理官からすれば
「どこかで昔の上司が怪我をしたと知って、見舞いに行こうと思ったが気まずさから偽名を使っただけかもしれないだろう。」
と、切って捨てられた。

確かに現段階では、行為そのものはたったそれだけのことなのだ。

行方をくらました形の本間を第一容疑者として考える管理官の考えも至極当然な理由である。

ただ、班長は浅霧の見立ても一理有るだろう事を承知していて、結城に
「浅霧から目を離すな。」
と釘を刺してきた

(そんな事言われなくたって、離すつもりはないけど・・・)
と思いながらも、どんなに目を凝らして後ろについてまわっても逃げられるときは逃げられてしまう。

本間の部屋の検証結果を待っている状態が続いていて、浅霧は珍しく動きが有るのを待っているようだった。

しかし、結城は知っている。

こういう状態がもう少し続いてしまうと、浅霧はどこかへと行ってしまう。

そういうのを少しでも避けるために、珍しく怖い顔をしている浅霧に
「いつものところに、コーヒーでものみにいきましょうよ!」
とダメ元でいうと、ムスッとした顔で立ち上がり、さっさと歩きだして出ていった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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