その6

文字数 370文字

「すみません! 」
という、悲鳴ににも似た声がその車両で響き渡った。

一斉に、僕のこの当たりは注目され、そしてその甘い匂いは一斉に拡がっていく。

僕を中心に、両隣の人にその飲み物はぶちかまされたのだった。

しかし、両隣にとっては幸いにも、僕にとっては最大の不幸にも雨だから撥水加工がしっかりされている服を着ていた両隣からその飲み物の残骸は流れ、水分はほぼ僕のスーツが吸い取った。

なんてことだろうか。

そもそも僕にツイてるという時があっただろうか。

振り返ってみれば大学は、そこそこの成績だったと思う。

ボランティアなんかも積極的に行い、仲間内でもなかなかの存在だったというのに、就職先がみつかったのは一番最後だった。

ある時期から皆僕に押し付けて、その間せっせと就活に勤しんでいたのだ。

それはいい、自分が気が付かない愚か者だったのだから。

その先が酷かった。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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