Discloseー13

文字数 570文字

平静を装わなければならない結城も、一瞬動揺してしまった。

その後も、いくつかの質問を、筋道立てずに質問していく。

「ドライブは好きなのか?」
「酒を飲むのか?」
「花の名前で知っているものは?」
と一見なんの意味もないように聞こえる質問。

質問を重ねるたびに段々と江尻に対するイメージが変わってきた。
口数も、事件関係のときほどなく、視線がどんどんと下を向いていく。

江尻が語った事件の話、3回ともにほぼ同じ言い回しだった。

彼の中で、この質問にはこう答えようという一つのシミュレーションが出来上がっているようだ・・と、班長ですら変に感心していた。

だというのに。

浅霧の質問は、なんてことのない日常の話のように思える。

新歓コンパとかでも時々上がるような些細な内容の質問は、少しずつ江尻にダメージを間違いなく与えている。

結城が3回も聞いた質問は、その途中でも自分の言葉を重ねて饒舌に話していたのに、浅霧の質問になった途端、視線がよく泳ぐ。

言葉に詰まると、じっと待つ。
そして同じ質問をする。

とうとう答えたくないと言い出したのは、いくつめかの質問だった。

「お父さんの職業は?」

資料上では会社員となっている。
そのとおりに江尻は会社員ですと答えた。

「その人は、2番目のお父さんのことだね。じゃあ、本当のお父さんはどんな職業をしていますか?」

江尻と結城は一斉に浅霧をみた。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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