ACT94

文字数 739文字

外で張っていた部下から車に乗って出発したことを確認した連絡受けたタイミングで、中西の替え玉が眠っている部屋にスタッフがなだれ込んだ。

江尻が置いていったのは、古典的で単純な仕掛けだった。

市販のオブラートとくすり用のカプセルに、市販の経口補水液を入れたものだった。

どちらも水分で溶ける。
停電しても作動するコンセントの上に置かれたそれは、やがて溶けて・・・、と、原理さえわかれば小学生がイタズラでもできてしまう。

ニセ中西には、バイタルモニターだけが装着され、残りはダミーモードだったが、そんなことを知らない江尻は、そこにある機器の電源コンセントの全てにその仕掛けを置いていった。

これで少なくても十数分は時間が稼げたと思われる。

もちろんそんな仕掛けが作動する前に回収した。

それに、この手の素人が思い描くほどそう簡単にこれらが止まっても死には至らない。

万が一以上があったら、すぐにスタッフが駆けつけるからだ。

ただ、明らかにこの行為事態には殺意までは認定できなくても、機械の故障などの損害を与えることは考えられる。

その始末をどうしようかと、比留田医師たちを始め思案しているところに御幸が合流し、その仕掛けがもたらす結果を踏まえ安全な場所で作動させた状態で警察を呼ぶようにと指示を出した。

下手にここで隠すよりも、公にするほうがいいという判断だった。

そうすれば自然に浅霧を巻き込める。

ただ、江尻の思惑通りにコンセントの部分で作動させると、何百万もする機会が壊れるので、なにかあれば自然に落ちただろう床に置き、そのまま溶かせた状態で警察に電話をかけてもらったのだ。

時間は任せた。

万が一警察が来ても、患者に迷惑のかからない時間帯に連絡すると比留田は約束した。

あとを比留田たちに任せて、御幸は去った。
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登場人物紹介

江尻甫(えじりはじめ)・・・このストーリーの主人公。都内の会社でSEとして働いている。ある日、警察から事情聴取を受ける。

浅霧・・・警視庁の刑事。少し風変わりだが優秀。自分の気に入った事件にはものすごく集中して動く。

結城・・・警視庁の刑事。浅霧の同僚。

御幸・・・なんでも屋。浅霧の大学の同級生。違法行為も行う。

三井・・・所轄の新人刑事

高橋・・・浅霧行きつけの喫茶店のマスター

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